「高級スマホ」期待から一転、需要肩すかしの余波 中華スマホの回復遠く、期待はAIサーバー向け

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村田製作所も、モビリティ向けの今上期(4~9月)売上高は想定未達となった。同社の中島規巨社長は「(EV関連では)非常に多くのプレイヤーがMLCCの分野にも出てきている。価格のプレッシャーは今後、非常に強まってくる。期末には年間の価格交渉も入ってくるので、値下げ影響を考えなければならない」と11月の決算説明会で語った。

太陽誘電も業績不振の理由の1つに、自動車関連の需要が想定を下回ったことを挙げている。全体に占める売上高の比率を見ると、2024年7~9月期の自動車用途は29%と前年同期の30%から微減した。

AI普及の恩恵

新たな成長ドライバーとして急浮上したのが、データセンター向けだ。人工知能(AI)の普及に伴い、GPU(画像処理半導体)を搭載した高機能サーバーの投資需要が激増。消費電力がかさむため、従来型サーバーと比べて5~10倍のMLCCを搭載する。

しかも、使用されるのは小型で容量の大きい先端品。日系メーカーが大の得意とする分野だ。村田製作所は今期から関連の売上高が約2.8倍に増加すると見込む。太陽誘電も前期比2倍以上に成長する可能性があるとしており、来期以降の巻き返しのカギとなりそうだ。

AIサーバー投資の増加は、データ保存用のハードディスクドライブ(HDD)需要も喚起している。TDKはHDD用ヘッドとサスペションの大手で、追い風を受けた。これらを含む「磁気応用セグメント」は前2024年3月期に356億円の営業損失を計上していたが、今期は上期までで18億円の部門黒字と急改善。通期でも黒字転換しそうだ。

AI関連では、専用チップを搭載したオンデバイス型のノートパソコンが2025年にかけて、市場に投入されるとの見方もある。スマホでも現在の生成AI搭載モデルはソフトウェア主体だが、端末に組み込まれたタイプが数年内に登場するとされる。端末内で複雑な計算を処理するため、高性能な電子部品の使用量も増えそうだ。

新たな需要を取り込み成長の糧とできるか、各社の舵取りが注目される。

石川 陽一 東洋経済 記者

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いしかわ よういち / Yoichi Ishikawa

1994年生まれ、石川県七尾市出身。2017年に早稲田大スポーツ科学部を卒業後、共同通信へ入社。事件や災害、原爆などを取材した後、2023年8月に東洋経済へ移籍。経済記者の道を歩み始める。著書に「いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録」2022年文藝春秋刊=第54回大宅壮一ノンフィクション賞候補、第12回日本ジャーナリスト協会賞。

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