ジム・ロジャーズ「日本の円安が心配でならない」 「日本は大丈夫」という考えは間違いである

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財務上の問題を抱える国家では、通貨が値下がりする現象が必ず見られる。通貨の本当の実力を示す日本の実質実効為替レートの2022年における数字を見ると、73~86程度で推移している。つまり、日本円は実に30年前の安値まで落ち込んでいると言える。

日銀の政策により円の価値が下がっている状況の中、逆にアメリカは利上げしているので、多くの投資家や資産家は円を売ってドルを買う、という動きに出たのである。もちろん、通貨を購入する理由は利回りだけでなく、その通貨を扱う国が安全であるかどうかといった点も重要な判断要素だ。そういった観点では日本円は魅力的であり、リスク回避のために持っておく、という投資家もいるだろう。

しかし今回の円安では、そのようなリスクヘッジを抜きにしても、円は大幅に売られ、捨てられ始めたのである。

現在の円安はゼロ金利政策が原因

私は、日本の財務状況は、ウクライナと戦争をしている現在のロシアよりも悪いと思っている。国の負債額がロシアと比べはるかに大きいからだ。国債の利回りが世界の主要国と比べて低いのも問題だ。つまり現在の円安は、日銀が長年続けてきたゼロ金利政策が原因だと結論づけることができる。

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私たち投資家は、市場の動きを注視している。特に外国為替市場で起きていることは、各国の問題や政策における課題を明るみに出すからだ。つまり外国為替相場は、その国でどのような政策が進められ、それにより何が起きているのかを示す、一つの重要な指標なのである。

このまま円安が進行する──日本円が海外の投資家から捨てられ続ける状況にまで落ち込んだら、円が別の通貨に置き換わったり、国が新しい通貨を発行したりするなどということも起こり得るだろう。

実際、深刻な経済不況やインフレが進んだジンバブエでは、それまで流通していたジンバブエ・ドルを廃止。米ドルや南アフリカのランドといった他国の通貨の利用を経て、新たなジンバブエ・ドルが発行されている。

「日本は大丈夫」「今回は大丈夫」。私が以前から述べていることでもあるが、このような考えは間違いであることを、最後に述べておきたい。

ジム・ロジャーズ 投資家、ロジャーズホールディングス会長

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Jim Rogers

1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し、10年間で4200パーセントという驚異的なリターンを上げる。37歳で引退した後、コロンビア大学で金融論を指導する傍ら、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍。2007年よりシンガポール在住。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。 主な著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』(日経ビジネス人文庫)、『危機の時代』(日経BP)、『ジム・ロジャーズ 大予測』(東洋経済新報社)『大転換の時代』(プレジデント社)がある。

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