一触即発「イランとイスラエル」戦争始まらない訳 「新しい種類の戦争」に突入している?
「この攻撃の性質は、地域戦争がさらに深まるという深刻なリスクに対する共通の認識を物語っているようだ」と、欧州外交問題評議会のジュリアン・バーンズ=デイシー中東部長は語る。
だからといって、現在のアプローチに危険がないわけではない、と同氏は指摘する。「極めて不安定で、持続不可能な道筋である可能性が高い」と同氏は話す。「また、イスラエルがより意図的にエスカレーションの階段を上っている可能性もある」。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は先週、ビデオメッセージの中で、もしイランが再び攻撃を仕掛けてくれば、紛争をさらに激化させる可能性があると警告した。「イスラエルは日々強くなっている」とネタニヤフ首相は述べた。「世界は我々の力のほんの一部しか見ていない」。
「衝撃と畏怖」の戦争はなくなったのか
イランとイスラエルによる一触即発の攻撃は、1996年にアメリカの軍事専門家2人によって初めて概念として紹介された、「衝撃と畏怖」として知られる戦争(圧倒的な火力、優れた技術、スピードを駆使して敵の物理的能力と抵抗する意思を破壊すること)とは似ても似つかない。
地上部隊を出動させるには、イスラエルやイランが何百マイルもの距離を越えて展開したいと考える以上の陸・空・海の資産が必要になる可能性が高い。
また、軍事界では、衝撃と畏怖の攻撃が実行可能かどうかという議論が続いている。自律型兵器と人工知能(AI)が戦争を変えつつある、と元統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍と元グーグルCEOのエリック・シュミットは8月に『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した分析で主張している。「アメリカ政府が圧倒的な火力で敵対勢力を壊滅させるような 『衝撃と畏怖』の作戦の時代は終わった」と彼らは書いている。
イギリス海軍戦略研究センターのアナリスト2人は先月、衝撃と畏怖の戦争は進化しているのであって、終わってはいないと反論し、イスラエルがレバノンのヒズボラに対して行ったポケベルとトランシーバーの爆発攻撃を指摘した。