中国の資源開発大手の紫金鉱業は、10月18日に開示した2024年7~9月期の決算報告書の中で、同四半期に予定していたアルゼンチンのリチウム塩湖での生産開始時期を2025年に延期したことを明らかにした。
南アメリカのリチウム資源をあてにしたEVメーカーの投資も変調をきたしている。中国のEV最大手の比亜迪(BYD)は2023年4月、チリの現地法人がチリ政府から「リチウム生産企業」のライセンスを取得。年間約1万2500トンの炭酸リチウムを2030年まで優遇価格で調達する権利を得た。
その見返りとして、BYDはリン酸鉄系リチウムイオン電池の正極材料の工場をチリに建設することを約束した。しかし財新記者の取材によれば、この工場の建設は目下ストップしている。
厳しい気候や環境規制も壁に
リチウムの生産方法には、塩湖のかん水から抽出する方法とリチア雲母などの鉱石から分離精製する方法の主に2つがあり、生産コストは前者のほうが低い。南アメリカのチリ、アルゼンチン、ボリビアの3カ国の国境地帯にはリチウムの含有率が高い塩湖が集中しており、「リチウムトライアングル」と呼ばれている。
だが、現実の資源開発は容易ではない。リチウムトライアングルは気候が厳しい内陸部の高地にあり、(リチウムの抽出に必要な)淡水資源の不足に加えて生活や交通のインフラも未整備だ。環境規制のハードルも高く、プロジェクトを前進させるには高い技術力と経験豊富な人材確保が欠かせない。
「中国企業は投資のタイミングや(資金回収までの)サイクルをもっとしっかり見極めるべきだ。ブームに踊って高値掴みするパターンを繰り返してはならない」。南アメリカの投資事情に詳しいある専門家は、そう警鐘を鳴らす。
(財新記者:廬羽桐)
※原文の配信は11月8日
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