斎藤さん再選に「熱狂する人」が知らない"真実" 今回の県知事選は「SNSによる完全勝利」とは言えない

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一方で、斎藤氏が完全に潔白であるとするのは無理があるのも事実だ。百条委員会が県職員に対して行った調査によると、回答者の42%が斎藤氏のパワハラ行為を知っていたとしており、パワハラを「目撃(経験)等により知っている」と答えた職員は140人にのぼっている。

「パワハラ行為はなかった」という主張は確かに無理がある。告発を公益通報とせず、告発者を懲戒処分にしてしまったことも問題がある。

斎藤元彦
再選を果たし、知事就任式に向かう車内での様子を投稿した斎藤氏(画像:本人の公式Xより)

県知事選の「特殊性」から学ぶべきこと

「SNSが隠れた事実を暴いた」、あるいは「メディアの偏向報道を是正した」とは、現時点では言い難い。SNS上では、今回の選挙結果が「日本を変えるきっかけになる」という声も出ていたが、SNSの影響を過信するのも適切ではない。

今回の兵庫県知事選をアメリカ大統領選のトランプ再選や、都知事選での石丸旋風となぞらえる論調もあるが、上記で見てきたように、今回の選挙は特殊事情も多く、一般化できない部分も多い。

兵庫県民で斎藤氏に投票した人の話を聞いても、必ずしも斎藤氏を熱烈に支持しているわけでもなかった。再選した斎藤氏が強権を振るいはじめたら、兵庫県民はそれを受け入れるかというと、疑問がある。

今回は地方選挙であるし、国政選挙で同様の流れが起きるとも限らない。日本はアメリカのように二大政党制にはなっていないし、極端に一方に振れたり、深刻な分断が起きたりする可能性は現時点では考えにくいように思う。

多くの特殊性がありながらも、今回の選挙は、政治におけるメディアやSNSのあり方を考えさせられる選挙であったのも事実だ。

選挙が終わり、メディア報道の制約も少なくなり、百条委員会も再開する。ここから、事実関係をしっかり検証し、適切な報道ができるのかが問われていく。そこを踏まえて、選挙結果の是非についても、有権者自身がしっかりと見届けるべきだろう。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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