「トイレをきれいに」より圧倒的に効果的な文言 人を動かすナッジと逆効果を生むナッジとは

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実は看板1は、意図とはまったく逆の効果をもたらしました。看板なしの状態では観光客全体のうち3%の人が化石を持ち出していましたが、看板1を設置することで、持ち出す人は8%に増えたのです。反対に、看板2を設置すると2%に減りました。

つまり、看板なしの状態に対し、看板1を設置したときには持出しが3倍近くに増えたのです。看板1は持出しに少しでも興味のある人にとって、「大勢の人が化石を持出ししている」という「同調バイアス」に訴えるものだったのです。

正しくは「大勢のお客様は持出しをしていません」とすべきでした。このように、望ましくない行動をしている人数が多いことを示すと、期待と逆の同調効果が働いてしまう可能性があります。

小さなメッセージ1つで人の動きが変わる

他にも、社員の参加を促したい総務からの連絡で、「当営業所のEラーニング参加率が全社ワーストです。積極的な参加をお願いします」のようなメールが届くことがあります。これは「皆が受けていないなら、しばらく様子を見てみよう」というネガティブな同調バイアスを刺激する、危険なメッセージになります。

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それよりは「毎月2%ずつ参加者が増えています」「あと3人登録すると、隣の営業所を抜きます」といったポジティブな同調効果に訴求するメッセージにしたほうが参加意欲を高めることになります。

このように、小さなメッセージ1つでも、部下に適切に伝えるためには、人を動かすコツや、認知バイアスを知っているといないでは、大きな差が出るのです。

竹林 正樹 ⻘森⼤学客員教授

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たけばやしまさき / Masaki Takebayashi

⻘森県出⾝。⽴教⼤学経済学部、アメリカのフェニックス大学大学院、⻘森県⽴保健⼤学⼤学院修了。MBA博⼠(健康科学)。⾏動経済学を⽤いて「頭ではわかっていても、健康⾏動ができない⼈を動かすには?」をテーマにした研究を⾏っている。ナッジで受診促進を紹介したTEDx トークはYouTubeで80万回以上再⽣。著書に『⼼のゾウを動かす⽅法』(扶桑社)、共著に『介護のことになると親⼦はなぜすれ違うのか』(GAKKEN)などがある。

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