近鉄16000系、南大阪線・吉野線「最古参特急」の今 「吉野特急」の元祖として観光と通勤両面で活躍

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吉野特急の車両の代表格としては、まず26000系「さくらライナー」が挙げられる。大きな窓が特徴で、乗務員室後部に展望スペースを設置した。特急料金のほかに特別車両料金が必要な「デラックス車両」が1編成に1両用意されていて、3列のゆったりした座席が楽しめる。

また、2016年デビューの16200系「青の交響曲(シンフォニー)」は3両編成の通勤車両を改造した観光特急で、専属アテンダントが乗車する。車内はカーペットにソファのような座席を並べ高級感を演出。2号車は「ラウンジ車両」でバーカウンターやライブラリーを備えた。ほかに16400系「ACE(エー・シー・イー)」、16600系「Ace(エース)」が活躍する。

1960年、元伊勢電気鉄道のモハニ231形を改造した車両で1日1往復の快速「かもしか」が運行を開始し、翌年に料金不要の特急として2往復走るようになった。そこに新型有料特急車両として投入されたのが16000系だった。

近鉄16000系 ク16100 前面 第7編成
近鉄16000系第7編成の吉野方。行き先は幕でなく左側の窓に掲げる(記者撮影)

デビュー前年の1964年10月に東海道新幹線が開業。近鉄はそれまでの名阪特急の優位性が失われることとなり、新幹線と接続する名古屋・京都や、大阪から自社線内の観光地に誘客する特急ネットワークの構築に舵を切った。吉野方面は京都から南下する京都線・橿原線の特急に乗り、現在の橿原神宮前で吉野特急に乗り換えてもらう戦略だ。

狭軌版の「新エースカー」

16000系は1977年にかけて9編成が製造された。大阪線など標準軌の11400系(愛称は「新エースカー」)の狭軌用の位置づけとなる。基本的に制御電動車とモーターが付いていない制御車の2両編成で、第8編成のみ4両固定で製造された。続いて1981年に実質的に16000系の第10編成となる16010系の2両編成1本が増備された。

登場時は、特急車両としては珍しく全編成とも出入り口のデッキがなく、ドアから直接客室に入る構造だった。のちのリニューアル工事で側面の一部ドアの撤去やデッキ仕切りの新設、シートの取り替えといった変更が加えられた。

近鉄16000系 車内
16000系第7編成の車内。座席は背もたれを前に倒して回転させるタイプ(記者撮影)

運用面で長く携わった古市検車区天美車庫の門垣泰功さんは「朝の通勤ラッシュ時は8両編成でも満席になった。桜の季節には長い検査期間に入らないように調整して22両をフル出庫させていたが、それでも輸送力が足りないくらいだった」と最盛期を振り返る。16010系については「新入社員のときに橿原神宮前―吉野間を『お召し列車』として走らせるためにワックスでピカピカに磨いた思い出がある」という。

古市検車区天美車庫 門垣さん
古市検車区天美車庫の門垣泰功さん(記者撮影)
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