干ばつでカリフォルニアワインはどうなる? 乾燥に強い新たなブドウ栽培方法模索も
それぞれのブドウ園では干ばつの被害を実感しているのかもしれない。とは言うものの、カリフォルニア州のワイン業界が順調に成長しているのも事実だ。
その一方で州内のワイン業者は(スミス・マドローンのように干ばつの影響の少ないところであっても)、今後のワイン製造のあるべき姿、特にいかに水を有効利用すべきかについて問い直すことを余儀なくされている。そして誰もが、冬に雨をもたらすエルニーニョ現象に望みをかけている。
地域貯水湖は危険な水準まで下がっているが
「ひたすら祈ってるよ」と語るのは、「デリカート・ファミリー・ビンヤーズ」でブドウ園の管理責任者を務めるチャーリー・ホッサムだ。州中部モントレー郡サンバーナビーのブドウ園の敷地は2833ヘクタール。同社はワイン醸造を手がける一方で、大小の醸造業者にブドウを卸してもいる。
世界最大級のこのブドウ園には専用の滑走路があるほか、灌漑用水路の総延長は22キロに及ぶ。だがこの地域の水源である2つの湖の貯水率は、干ばつのせいで危険な水準まで下がっている。
規模が大きいにも関わらず、このブドウ園では持続可能な農法をかたくなに守っている。水の問題を考えることなくして、ブドウ栽培に関するいかなる決定も不可能だ。
このブドウ園では干ばつ対策として、水路の底にシートを貼る工事が進められている。土を掘っただけの水路から大地に水が吸い込まれていくのを防ぐためだ。またホッサムらは、栽培している20種ほどのブドウのなかでどの品種に重点を置くか選ぶことも余儀なくされた。残りの品種については保険をかけ、あとは運を天に任せるという。
長期的な対策として、灌漑の効率化についての研究にも取りかかっている。土壌中の水分を測るセンサーと、ドローンに搭載した赤外線カメラを駆使し、81ヘクタールの畑の土の保水力をブドウの木1本単位まで細かくマッピングしている。
スプリンクラーでブドウに水やりをしていたおおざっぱな1970年代は言うに及ばず、点滴灌漑のようなもっと現代的な手法と比べても大きな進歩と言えるだろう。
「1本1本のブドウに割り当てられた地面(の保水力)をガスタンクだと考えてみるといい」とホッサムは言った。「土壌マッピングでは、畑にあるありとあらゆるガスタンクの大きさをチェックできる。最も小さいタンクがいっぱいになるくらい水をやっておけば、タンクが大きいエリアも大丈夫なはずだ」
だが、水の管理だけで干ばつに太刀打ちできるとは限らない。パソロブレスに近い「アンビス・エステート」は質の高いワイン造りで知られるワイナリーだ。丘陵の急斜面に広がる6ヘクタールのブドウ園は、干ばつのためにすっかり干からびてしまっている。
カリフォルニアでは灌漑に頼らない乾地農法に取り組むブドウ園が増えており、アンビスもかたくななまでにこの農法にこだわっている。乾地農法では、ブドウは地下水を求めて根を深くまで張るという。
乾地農法はこれまでカリフォルニアで多く行われてきた農法とは一線を画すが、家族とともにアンビスを経営しているフィリップ・ハートは、乾地農法のほうが質の高いブドウが採れると信じている。