原発危機の経済学 社会科学者として考えたこと 齊藤誠著 ~事業としての原発の行方を論じる

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事業継続の上で最大の障害となるのが、使用済み核燃料の貯蔵能力である。事故の前から、数年の内に、貯蔵プールが使用済み燃料で満杯となるため、事業継続が危ぶまれていた。

政府がコストの大きな再処理・高速増殖炉事業を断念していないのは、結局、使用済み燃料の最終処分地を選定できないからだと評者は考えている。つまり、再処理・高速増殖炉事業には、中間貯蔵の役割が与えられている。貯蔵施設建設のコンセンサスが得られなければ、原発事業そのものを断念せざるを得なくなる。

あまりに大きな問題であるため、決断は政治的理由から先送りされるのではないかと、評者は大変懸念している。

東京電力の事業再生について、本書を読んであらためて感じたことは、現状の事業形態のままでは、安定的な電力供給だけでなく、福島の廃炉処理などを支える人的・物的資本の蓄積までもが滞るのではないか、という懸念である。電力市場改革と共に、東電の事業再生も急務であるが、政府は真正面から対応できるだろうか。

さいとう・まこと
一橋大学大学院経済学研究科教授。1960年愛知県生まれ。京都大学経済学部卒。米マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。住友信託銀行調査部、カナダのブリティッシュ・コロンビア大学経済学部助教授などを経る。

日本評論社 1995円 286ページ

  

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