身寄りなし76歳が「孤独死」を覚悟した凄絶背景 単身世帯4割、誰もが「孤独難民」になりうる
知的で人懐っこそうな話しぶりの芳子は社交的なタイプに見える。だが、現在は友人とも疎遠になったという。「孤独を受け入れようとしているけど、人は完全に孤立したら生きるのは難しいと思う」。
今の芳子の心の拠り所は、東日本大震災のときに福島県からもらってきた猫だ。「生活保護なのに猫を飼っているとバッシングされるでしょ」と心配しながら、「この子を置いては逝けない」と言う。
猫は今年で推定15歳になる。
単身者と夫婦のみの世帯が約6割
頼れる家族がいない「身寄りのない」高齢者は、今や珍しい存在ではない。総務省によると、単身者と子どもがいない夫婦のみの世帯は合わせて58.2%に上る(2020年)。誰もが身寄りがなくなり、行き場を失う「孤独難民」になりうる時代だ。
すでに病院では身寄りのない高齢者の対応に苦慮している。
済生会神奈川県病院の社会福祉士・鎌村誠司さんは、退院時に帰る自宅がない男性患者と一緒に賃貸住宅を探し回ったことがある。10件以上入居を断られ、結局その男性は無料低額宿泊所に入り、亡くなるまでそこで過ごした。入院中も、家族がいない患者は預貯金を1人で引き出しに行けないため、病院のスタッフが郵便局まで付き添うことがある。
これらは本来、病院の業務ではない。「10年前まではそこまで問題になっておらず、何となく僕らがやっていた」(鎌村さん)が、近年家族のいない患者が増えて対応に追われているという。
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