春山:とても共感できます。
窪田:個人が自分の健康を気遣うことが非常に大事な時代に入ってきたと感じています。もちろんどの年齢でも遅くはありませんが、子どもの頃にいい身体のベースを築いておくと、一生を通じて健全な肉体を維持しやすいですよね。
春山:眼科医である先生から見て、近視になることのリスク、また近視人口が増えることで発生する社会的リスクについて教えていただけますか。
窪田:医学面と経済面、それぞれにあります。まず医学面としては、近視になることで大人になってから緑内障や網膜剥離など、失明リスクのある眼疾患に罹る確率が跳ね上がります。
また、経済面としてはGDP(国内総生産)を損なう要因になると指摘されています。例えば日本より近視率が高い中国では、GDPの1~2%にあたる年間30兆~60兆円の経済損失が近視人口増加によって発生しているといわれています。
「近視は遺伝」と思われていた
春山:なるほど。先生は著作の中で「目は臓器である、脳の一部である」と書かれています。そこまで大事な臓器である目のケアが、日本でここまで関心が持たれていない現状には社会的な背景があるのでしょうか。
窪田:日本ではこれまで近視は医学的に「屈折異常」と呼ばれ、病気として捉えられてきませんでした。病気ではないため「治療の施しようがない」「眼鏡などの矯正器具をつけましょう」という流れだったかと思います。
「近視は遺伝」と思われていた時代も長かったですね。「近くでテレビを観続けると目によくないよ」「遠くを見ると目にいいらしいよ」と世間では言われ続けていました。そして、その科学的根拠が明らかにされ、国民に周知されるのも遅いと感じています。
春山:歯に関しては、家庭以外でも、園や学校で「歯を磨くように」と散々言われています。歯を磨けば虫歯や口の中の病気を予防できることは子どもでも知っています。ですが、目に関してはあまり聞いたことがないですね。