被災地のソニー子会社が期間社員への賃金引き下げを撤回、年末の雇い止めも回避

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被災地のソニー子会社が期間社員への賃金引き下げを撤回、年末の雇い止めも回避

液晶テレビ用フィルムの製造に従事していたソニーケミカル&インフォメーションデバイス社(SCID社)の期間社員が震災被害を理由とした雇い止め方針の撤回を求めて同社および親会社のソニーと団体交渉を続けてきた件で、2012年1月についても従来と同じ条件(時間給1200円)で雇用を継続をすることで労使が合意。「東日本大震災の被災地で年の瀬に解雇」という事態は寸前で回避された。

雇用継続を求めて団体交渉を続けてきたのは、ソニー仙台テクノロジーセンター(宮城県多賀城市)に勤務するSCID社の期間社員15人。ソニー仙台TECは東日本大震災による被害を理由に事業規模を大幅に縮小。同センター内で働いていたSCID社など子会社所属の期間社員119人全員に対して、「契約期間満了」を理由とした雇い止め方針を5月下旬に通告した。

だが、期間社員のうち22人が雇い止めを拒否。「製造ライン立ち上げを担うとともに、正社員に仕事の内容を教えるなどのこれまでの働き方の実態に照らしても、期間社員の身分だからという理由での一方的な雇い止め方針には納得できない」として、SCID社およびソニーとの間で団体交渉を続けてきた。

事態が急変したのは12月。それまでソニー側は交渉継続を目的に1カ月ごとの「暫定契約」を期間社員との間で締結してきたが、12月に入って退職の条件に盛り込んでいた「慰労金」の取り崩しが終了したことを理由に12年1月の賃金を12万円に減額する方針を通告。賃金が従来より35%以上も減ることになるため、期間社員からは「妻や幼い子どもを抱えて生活費にも満たない」「子どもの出産を間近に控えていて、どん底に突き落とされた気持ち」「大学進学時の奨学金債務の支払いも不可能になる」といった悲鳴が上がっていた。

期間社員は12月26日に宮城県庁内の記者クラブで窮状を訴える記者会見を開催する一方、山下芳生参議院議員(共産党)が小宮山洋子厚生労働相に面会してソニーへの指導を要請。同大臣室によれば、小宮山厚労相からは「これまで9回の啓発指導をしてきた」「行政としてこれ以上何ができるか難しい面はあるものの、これまでやってきたことに照らしてさらに何ができるか検討させてほしい」との発言があったという。そして翌27日に開催された団体交渉で、従来と同じ賃金水準(時間給1200円)での雇用契約を12年1月についても締結する方針が会社側から示された。

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