限界集落の廃校で絵を描き続ける85歳彼の人生​ ​​活動資金は年金・絵の売り上げ・入館料​

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​​個人美術館であるため、一般的な美術館とはシステムが異なる。入館しても受付に係がいるとは限らない。

​​校庭の奥に見えるのが工藤耀日美術館。訪問するだけでも一苦労なほど、深い山奥に位置している(写真:著者撮影)​ 

そのときは、自ら工藤さんのプライベートルームとなっている職員室に出向き、入館料1000円を支払って受付を済ませる必要がある。工藤さん自らが絵の解説をしてくれるアットホームさも、ここならではだ。​ 

​館内を案内してもらいながら、いかにして絵に取り組み、現在のこの地にたどり着いたのか、工藤さんの画家人生について話を伺った。そこには絵の道を探求し続けてきた一人の画家の情熱に満ちた人生があった。​ 

​廃校を自分の絵で埋め尽くす​ 

乃木坂46のシングル曲「新しい世界」のPVが撮影された技術室(写真:著者撮影)​ 

​​工藤さんのお話の前に、まずは館内の様子を紹介したい。​ 

​​作品が並ぶ校舎は、廃校当時の状態そのまま。学年が書かれた室名札が見られ、階段を上るときのギシギシと軋む音には、昔の木造校舎ならではの情緒を感じる。​ 

​​敷地内には教室や職員室がある建物以外にも、理科準備室、技術室、給食室などの建物が点在する。かつては泊まり込み業務を行う宿直の先生がいたことから、宿直室や風呂場が見られる点は、昔の学校ならでは。

ドラマやプロモーションビデオのロケ地にも選ばれるノスタルジックな雰囲気で、かつてここで子供たちが青春時代を過ごしてきた息遣いが聞こえてきそうな空間が広がっている。​ 

体と共に動く筆さばきは躍動感にあふれ、感情の力強さが伝わってくる(写真:著者撮影)​ 

​​工藤さんの絵画は豪快な筆さばきに加え、色使いは実に独特。展示の多くは墨画の持つ「余白の美」と西洋画の持つ豊かな色彩で感情表現を加えた「墨彩画」であり、西洋と東洋の精神を融合させた芸術作品となっている。​ 

​​武田信玄やマイケル・ジャクソンなどの人物を題材にした作品は躍動感にあふれ、日本三大桜、中国の黄山などの風景を題材にした作品は、美しさに加え迫力も満載だ。​ 

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