日本企業は倫理資本主義を実践できるのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(3)

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政府の仕事は、法律を破壊したり、悪法を作ったりすることではありません。政府が良い法律を作るためには情報が必要です。政策立案者は正確には専門家である必要はないのですが、彼らが十分な情報に基づいて意思決定できるように、どのような可能性があるかを伝える専門家が必要です。

これは単なるトップダウンではなく、循環型の構造をとると、私は考えています。企業からボトムアップで統治機構に情報を提供し、そこから経済界に情報をフィードバックされることもあれば、トップに実業界が来ることもあります。なぜなら、政府は税収なしに何もできないからです。経済は政治の中にあり、政治は経済の中にあるのです。

各分野で日独が相互に学び合う

名和:それが循環構造ということですね。日本社会は「インダストリー4.0」をはじめ、ドイツから多くのことを学びました。

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たとえば日本経済団体連合会は、政府とともに4.0より1つ進めた「Society 5.0」という新しいコンセプトをつくりました。ですが、現実の社会ではドイツと真につながっているとは言えず、単にインダストリー4.0をコピーしただけにも思えます。これは残念なことです。

まずはドイツとつながり、ドイツから学ばないといけないし、日本の考え方をドイツに循環させることができるかもしれません。ビジネス、政府、そしてもちろん教育のレベルでも、日独で協働する。その意味で言うと、日独を行き来されているガブリエルさんは希望の存在ですね。

※第4回は、11月5日を予定しております。

(翻訳・構成:渡部典子) 

マルクス・ガブリエル 哲学者、ボン大学教授

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Markus Gabriel

1980年生まれ。ボン大学、ハイデルベルク大学などで学び、史上最年少の29歳でボン大学の哲学科正教授に就任。同大学国際哲学センター長も務める。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新実在論」を提唱して世界的に注目される。著書に『なぜ世界は存在しないのか』『「私」は脳ではない』(ともに講談社)、『新実存主義』(岩波新書)などがある。

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名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

1980年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。10年より一橋大学教授。22年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、デンソー、味の素などの社外取締役を歴任。現在、SOMPOホールディングスの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役など。著書に『パーパス経営』(東洋経済新報社)、『超進化経営』(日本経済新聞出版社)、『問題解決と価値創造の全技法』(ディスカヴァー21)などがある。

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