「新型iPhone」は、メインディッシュではない ダークホースは「Apple TV」の新機能

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ゲームコントローラが充実するのであれば、カジュアル層、ファミリー層に対して訴求するコンテンツが用意されるだろう。ただし、ゲームはコントローラによって設計が大きく変わるものだ。現在、リリースされているiPhone、iPad用ゲームをそのまま遊べるようにするのは難しいと考えられる。

もしアップルが据え置きゲーム市場にアプローチするなら、何らかの独自性、あるいは普及への足がかりが求められる。

一方、北米ではNetflixをはじめ、インターネットを通じた映像配信サービスの普及が急速に拡がっており関連するサービスも多い。中でも、Netflixはこの業界のガリバーといえる。

現行のApple TVも、Netflix、hulu Plus、Vimeo、YouTubeといった北米系映像サービスのほか、NBA、MLB、NFLなどの米メジャースポーツ情報サービスへのアクセスなどが可能だ。日本ではJリーグが試合映像の配信を行っているほか、バンダイのアニメ配信も行っている。

日本向けサービスは充実しているとは言いがたいが、北米向けサービスだけで言えば、Apple TVはなかなか充実しているとはいえる。しかし、アップル自身が提供しているiTunesによる映像配信サービスは、やや時代に取り残されている。

Netflixに対抗するサービスを出すか

iTunes Storeでは電子的に像作品を買い切る”EST”、見始めてから48時間の再生が自由に行えるレンタル型の”TVOD”での視聴が中心だ。これは従来の映像パッケージ販売およびレンタルのデジタル配信への置きかえモデルだが、テレビのようにいつでも好きなコンテンツを自由視聴可能なスタイルを好む視聴者は、加入料を支払ってコンテンツ見放題となるSVODと呼ばれるサービスが人気だ。ここで多くのユーザーを持っているのがNetflixだ。

今回の発表のメインディッシュはAppleTVかもしれない

こうした中でApple TVが、テレビ向け端末として特別な存在となるには、別の角度からの一手が必要になるだろう。ディズニー系列であるABCやディズニーチャンネルはもちろん、関係を深めているHBOの配信を強化という方向もあるが、”衛星放送事業のネット化”を推し進める可能性はありそうだ。

米国ではDirecTVがNetflixと並ぶ大手映像配信事業者になっている。DirecTVの親会社となっているAT&Tがスマートフォン、タブレットユーザーにDirecTVのコンテンツを配信しているからだ。つまり、携帯電話事業、通信事業の大手が、衛星放送事業を取り込み始めている。同様の動きは日本でも起き始めているが、アップルがこの状況を黙ってみているとは思えない。

あるいは、9月9日のアップル発表会は、ダークホース「Apple TV」が、もっとも大きな話題を集めることになるかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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