「トランプ大勝利なら関税大幅引き上げ」は本当か 2025年もアメリカの株価は堅調に推移しそうだ

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ただ、筆者は、もしアメリカファーストを掲げるトランプ氏が再び大統領となり、共和党が議会を制しても、2016年のような金利上昇、ドル高、株高は起きないと考えている。

まず財政政策はやや拡張的になるが、成長率を追加的に押し上げる政策手段は限られる。そして、外交安全保障の交渉のツールとして関税政策が使われる中で、中国からの輸入品に対する関税引き上げが実現するだろう。

ただ、関税引き上げは、貿易活動や企業のグローバル戦略を抑制する経路で経済活動を阻害し、アメリカの経済厚生(国民の満足度)を長期的には抑制する要因になる。

短期的にも、関税引き上げが輸入物価を押し上げるため、関税引き上げが大幅かつ広範囲に実現すれば、FRB(連邦準備制度理事会)の政策判断が難しくなる。「トランプ政権誕生」によって、本格的に関税引き上げ政策に踏み出すことになれば、2025年にかけての株式市場は不安定にさせる要因になると見込まれる。

トランプ氏の関税政策は外交交渉のツールとして限定使用か

筆者は、もしトランプ政権が誕生して共和党が上下院の議会を制しても、株式市場がそれを好感する可能性は低いと考えている。ただ、社会の分断が深まる中で行われる大統領選挙においては、ハリス氏、トランプ氏のいずれが大統領となっても、2025年のアメリカ経済に決定的な影響はもたらさないだろう。

トランプ政権誕生で駆使されるであろう関税政策は、外交交渉のツールとして使われるので、現在同氏が掲げているような大規模な関税引き上げには至らないはずだ。であれば、インフレ制御に成功したFRBによる金融政策が今後機動的に繰り出されるため、アメリカの経済成長が2025年末まで続くとみられる。

また、大統領選挙が終わり、政策への不透明感が薄れれば、投資行動に慎重だったアメリカの企業が前向きな姿勢に転じる。そのため、FRBの利下げと相まって、企業の設備投資が経済成長を支えるだろう。アメリカ経済全体を見渡すと、企業や家計による実物資産や債務残高などで「過剰な積み上がり」はみられないことも、2025年の経済成長を安定させる要因になる。

目先は最後まで接戦でもつれる大統領選挙への思惑や結果が判明する中で、米国株市場が乱高下する場面も想定される。ただ、米国経済の底堅い成長が2025年以降も続くと予想されるので、米国株市場が下落基調に転じる可能性は低い。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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