給食メーカーが介護食に大胆進出して遂げた復活 赤字で倒産危機→ニッチを極めて業績回復

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 並行して、全国各地の卸さんへ片っ端から電話営業をかけて、アポが取れたところへ「なごみのひととき」をサンプルに訪問して回りました。 

訪問を続ける中で、卸さんのほうでも介護食や病院向け、高齢者用のデザートの分野において、他社と差別化できる、オリジナリティのある自社のプライベートブランドを求めていることを知りました。その後すぐ岩手の卸さんと取引が始まり、そこからはまたほかの卸さんを紹介いただいてどんどん取引が広がっていきました。 

―需要があったんですね。 

介護食の主食や主菜、副菜は大手企業が手掛けるケースも多く、市場規模が非常に大きいのですが、フルーツなどのデザートは大手がさほど参入していないんですよね。市場規模が小さいのです。でも介護の現場では必要とされているので、そういったニーズに応えたいと思いました。 

―大手が参入しにくいジャンルだったんですね。 

大手企業では、規模の小さい、ニッチな分野の商品開発はなかなか注力しづらいですよね。中小企業としての差別化戦略はつねに考えておりまして「ニッチな困りごとに応えられるような製品」には近年特に力を入れています。その一つが今まさにお話ししている介護食としてのデザートで、もう一つがアレルギーのあるお子さんも配慮したデザートを作ること。乳、卵、小麦を使わないケーキやプリンの開発に力を入れています。 

「食の課題を解決する」がミッション 

―確かに今、食物アレルギーのある方が増えていますね。 

だからこそ、食卓を囲むみんなで同じものをおいしく召し上がっていただけるシーンを私たちは作りたいと思っております。乳、卵、小麦粉を使っていないケーキはアレルギーのある方も一緒に食べられます。普段ケーキを食べられなかったお子さんから「はじめてケーキを食べました」と喜びのお手紙が届いたりするんですよ。そういったお声をいただくとすごく励みになりますね。 

弊社の商品開発のこだわりは、介護食やアレルギー対応商品など、どの商品にしても「誰もがおいしく食べられる商品であること」を大切にしています。「体には優しいけれどおいしくない」というものは商品化しておりません。 

―食事って命をつなぐためのものでなく、毎日の楽しみとして大きいですよね。 

高齢になると食の選択肢が限られてきますが、「食の課題を解決する」のが私たちの仕事なので、そこはこだわり抜いて今後もやっていきます。 

弊社の人気デザートシリーズ「ギュッと完熟」も、咀嚼力・嚥下力の低下してきた祖父母にもおいしい果物を食べてもらいたいという弊社の社員の思いから生まれた商品です。 

果汁を固めてゼリーにしたような商品で、風味は果物そのものですが、柔らかいので舌で潰して食べられるのが特徴です。お年を召して歯が弱くなりフルーツが食べづらくなった高齢者の方に、おいしく味わっていただけるようになっています。 

見た目はカット果物そのものだが、柔らかく食べやすい(筆者撮影)  
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