石破首相「夫婦別姓」翻意で高まる自民党への圧力 自民過半数割れなら、党内議論を待たず実現も

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今回の衆議院選挙の結果自体が、夫婦別姓制度の導入時期に大きな影響を与える可能性もある。

各情勢調査によると、自民党は議席数を減らし単独過半数の維持は微妙と見られている。自民党・公明党の与党で過半数を確保できるかが攻防ラインとなっている。

9月30日に自民党と公明党によって交わされた連立政権合意書では「選択的夫婦別姓」に関して明記されず、公明党は制度の導入推進を衆院選の選挙公約に掲げている。もし自民党が単独過半数を割った場合、公明党や野党が法案で一致すれば、自民党内の議論を待たずに選択的夫婦別姓の導入が実現する可能性がある。

どう家族の関係は変わるのか

法改正に向けた環境が整いつつある中、家族のあり方と氏の関係をどう整理すべきか。

社会学者で文教大学専任講師の中井治郎氏は、「戸籍制度はイエ制度の下で出来たが、(氏の問題は)今やイエ制度ではなくジェンダーの問題となっている」と分析する。従来は家名の存続が一番の目的で、長男以外の男性は養子に出されるなどして姓を変えることも珍しくなかった。「今は『男の姓を残す』という価値観にスイッチしている」(中井氏)。

さらに「学校や会社の人間関係が流動的になる中で、安定してみえるものが家族であり、姓が情緒的な結びつきのシンボルになっている。選択的夫婦別姓の実現は不可避だが、社会として夫婦別姓の選択肢を迎える準備が必要だ」と指摘する。

結婚に際し95%もの女性が改姓しており、アイデンティティの喪失感や日常生活におけるさまざまなトラブルといった不利益が女性に偏っている。長年放置されてきたこの現状を変えることが、固定的な性別役割分担意識からの解放や、家族のあり方や生き方を自ら選択できる社会の実現につながる。

今年3月に始まった第3次夫婦別姓訴訟は、最高裁での判決が出るまでに3~5年かかるとされている。立法府である国会が本来の責任を果たせるか。「いつまでも引き延ばすことはしない」と明言した石破首相には、強いリーダーシップが求められている。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ゲーム・玩具、コンテンツ、コンサル業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、医療機器、食品など。趣味は東洋武術。

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