野村、「敗訴で巨額損失」の誤報が流れた理由 訴訟は継続中、損失額は引当範囲で収まるか

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今回、誤った憶測が流れたのは、野村とFHFA との間に交わされた合意事項が地裁判決の受け入れたと混同されたためだ。合意事項は同訴訟の訴訟費用の負担割合だったが、一部で「野村の敗訴イコール8億0600万ドルの支払い」と誤った位置づけがなされて憶測を呼んでしまった。

しかし合意事項の負担割合は、たとえば、「一定の条件の下で敗訴した側が訴訟費用3300万ドルを負担する」といった内容だった。損失額は無関係であり、しかも、訴訟が終わっていないため、その金額の負担の有無も決定していない。

決着すれば損失発生は不可避

その意味では、現時点において、野村には訴訟関連の損失額や訴訟費用が発生した事実はないことになる。しかし、今後、他社のケースのように和解などによって最終的に決着した段階では、損失発生は避けられそうもない。仮に損失額が確定した場合は、次に野村とRBSとの間で負担割合が決定されてから野村の正式な損失額も確定する。

野村は具体的な情報開示は行ってはいないものの、米国基準に基づいて、損失の蓋然性が高い訴訟案件については合理的な金額の引当措置を行っており、本件の関連引当もその対象となっているものとみられる。

その引当範囲で実際の損失が収まるかどうか。本訴訟の今後の成り行きをから依然として目が離せない。

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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