現に、よく街中などで「NON STYLEのコント、いつも見てます!」と声をかけられます。見てもらえるのは、ほんまにありがたい。でも言わせてもらうと、僕らがやっているのは「漫才」です。「コント」ではありません。
漫才とコントの線引きはプロの間でもさまざまですが、僕はざっくり「漫才」「漫才コント」「コント漫才」に分けて考えています。
漫才は、ひとことでいえば「しゃべくり」です。NON STYLEやったら、「井上」と「石田」という2人の人間が話して笑わせる。「偶然の立ち話」という漫才の基本に忠実なスタイルです。
一方、漫才コントとコント漫才は、コントの手法を取り入れた漫才のこと。コント=劇なので、特定の場面設定のもとで2人が役柄を演じます。よく見る典型は、「俺、ずっと◯◯してみたかってん」「ほなやってみよか」式に漫才に入るやつですね。
「漫才コント」が多いNON STYLE
じゃあ、漫才コントとコント漫才はどう分けられるかといったら、「設定の中の役柄と素の自分を行き来する」のは漫才コント、「設定の中の役を演じ切る」のはコント漫才、という区別です。簡単にいうと、より漫才に近いのが漫才コントで、コントに近いのがコント漫才という分け方です。
僕が「NON STYLEのコント」と言われると違和感を覚えるのは、コント漫才よりも漫才コントをやることが多いからです。
NON STYLEにも、場面設定をしたうえで漫才に入るネタはたくさんあります。ただ、コントの設定の中にいる時間よりも、漫才、つまり素の自分たちのしゃべくりをしている時間のほうが長いんです。
たとえば、2008年のM-1決勝で1本目に披露したネタ「人命救助」は、「川で少年が溺れているのを発見したらどうする?」という井上の振りで始まります。
そこから「少年を助けるために携帯で救急車を呼ぶ」という場面設定になります。
井上:お前のために呼ばんでええねん。少年のこと聞いてくんねん。少年の意識はありますか?
石田:意識はないです。あともうやる気もないです
井上:お前の話はいらん! 息はしていますか?
石田:息はしていません! てか息が合っていません!
井上:俺らの話はどうでもええねん!
このように、僕は「携帯で救急車を呼ぶ」という設定の中でも、「もうやる気もないです」「息が合っていません!」と、「素の石田」としてボケて、それを「素の井上」が突っ込みます。
つまり、「設定上の井上・設定上の石田」になったり、「素の井上・素の石田」に戻ったりを繰り返しているわけです。
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