ステンレス業界の苦渋、再編も業績改善の特効薬にならず

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内需低迷の中、各社はこれまで輸出に力を入れてきた。海外では東南アジアなどでステンレス需要が拡大中。NSSCは前11年3月期の輸出比率が約4割になった。ただ、足元は円高が足かせとなり、汎用品の輸出では利益が稼げなくなっている。

先行きも楽観できない。日本勢は海外メーカーと比べると、生産規模で圧倒的に劣る。主要5社(NSSC、JFEスチール、日新製鋼、日本冶金工業、日金工)合計の年産能力は300万トン規模。これに対し、韓国のポスコ、中国の太源鋼鉄、日新製鋼の持分法適用会社であるスペインのアセリノックスは1社で300万トンを生産できる。

海外勢との合弁で活路は開けるか

実はこの3社は、もともと日本のメーカーが技術を教え、それを基に育った企業だ。ところが、今や高いコスト競争力を背景に、日本市場でも存在感を高めつつある。日本のステンレス輸入量は09年7~9月の3・5万トンから、11年7~9月は4・8万トンと着実に増えている。

ステンレス鋼板の価格は、1トン当たり30万円前後。10万円を切る普通鋼と比べて販売価格に占める輸送コストの比率が低く、さびないこともあって輸出しやすい。「(海外だけでなく)主戦場の国内でもやられている」(NSSCの伊藤仁常務)。

こうした厳しい環境の下、日新製鋼と日金工の統合は必然だったといえる。経済産業省の塩田康一・鉄鋼課長は「日本の国全体でやっと300万トン。今回、日新製鋼と日金工が統合してもまだ小さい」とさらなる再編の必要性を説く。

その場合、障害となりそうなのが独占禁止法だ。仮に最大手のNSSCが統合を画策しても、公正取引委員会の目が気になって動きにくい、というのが業界関係者の共通する見方になっている。

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