中止の新線計画復活?英「政権交代」で鉄道大改革 国鉄民営化以来続いた運営方法も大幅見直し

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

敷設予定の土地の一部はすでに政府が買収済みで、測量などに20億ポンド(約3900億円)が費やされているという経緯もあるが、金がない、とあきらめた高速鉄道の新設計画がこうした形で復活するのはやはり政権交代のおかげと言えるだろうか。沿線の人々は、失望から希望へと気持ちを切り替えている様子がうかがえる。

HS2路線計画図

そして、政権交代を機に、労働党は現在のイギリス鉄道の仕組みである「上下分離・フランチャイズ方式」を一から見直し、次なるステップに進むという大きな決断を下した。

コロナ禍で露呈した鉄道運営の脆弱性

イギリスの鉄道は1994年、国鉄(British Rail)の民営化のプロセスの一環として上下分離化され、その後1996~1997年に運行が民間に移行した。「下」に当たるインフラの管理は運輸省傘下のネットワーク・レール(Network Rail)が担い、「上」に当たる列車運行は入札を通じてフランチャイズ(運行権)を得た民間の鉄道運行事業者(TOC)が担っている。

イギリス鉄道フランチャイズ制度 仕組み

民営化は鉄道の活性化を招き、コロナ禍前には全国の鉄道利用者数が第2次世界大戦後最多にまで増えた。一方で、こうした二重構造が存在することで、インフラ管理側と運行を担うTOCとの連携不足、サービスの一貫性の欠如、さらには需要があるのにインフラ側の工事の都合でやたらに運休するといった利用者の視点を欠いた運営など、さまざまな問題を引き起こし、鉄道サービス全体の質を低下させる要因ともなっていた。

south western railway
ロンドン南西部を走るサウスウェスタン・レールウェイの列車。各地でさまざまなTOCが列車を運行している(筆者撮影)

政権交代によって一気に鉄道改革が加速しているわけだが、それ以外にも改革に着手しやすくなった大きな理由がある。それは、コロナ禍という未曾有の事態によって、これまでの仕組みの脆弱性が一気に露呈したためだ。

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事