塩田潮
臨時国会が閉幕したが、補正予算が成立しただけで、重要法案は軒並み未成立に終わった。与野党協議も不発、参議院で2閣僚が問責決議を受け、このままで次の通常国会に臨めるのかという問題が横たわる。
一方、予算編成の壁が立ちはだかり、財政難の下で首相の指導力が問われる。首相自身が「年内に方向を」と宣言した税と社会保障の改革や国会議員の定数削減も未解決の宿題だ。内閣支持率は下落の一途をたどり、政権立て直しのための内閣改造論が浮上し始めたが、内紛再燃による年末・年始政変を予想する声も……。
現在の野田政権の解説ではない。1年前の2010年12月上旬に書いた記事だが、現状と瓜二つである。去年は臨時国会で参議院が菅内閣の仙谷官房長官と馬渕国交相の問責決議案を可決した。それから1年、大震災と原発大事故、半年後の菅首相辞任と野田内閣誕生という激動の展開となった。だが、民主党政権の実態、与野党の関係、山積する未解決の諸課題など、政治の基本構造は結局、何も変わっていないのでは、というのが実感だ。
政権担当3カ月余とはいえ、当面の課題の処理に追われる「どじょう首相」の安全運転が問題なのか、次々と首相を取り替えてもうまくいかない民主党政権の限界なのか、野党も含め、激動の内外情勢に機能しない「無力政治」が病根なのか。
いずれも当たりだ。
2011年、欧米の苦況で近代資本主義の歴史的転換点という認識が広がり、日本でも大震災などで戦後型システムの終焉が明確となったが、いま何よりも重要なのは「機能する政治」である。それなら大連立、あるいは解散・総選挙で政権選択のやり直しを、という声がすぐに上がる。その選択肢も無視すべきではないが、07年以来の苦い経験を踏まえ、そろそろ与野党とも知恵を出し合って「無力政治」の根本治療に乗り出す時期ではないか。
野田首相が自ら捨て石となってそのための指導力を発揮すれば、辰年の来年、どじょうは「昇龍」となる可能性がある。最悪の事態は、無策のまま、1年後、冒頭の記述のような場面をみたび迎える展開である。
どじょうは消え、日本は底無しの泥沼に沈みそうだ。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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