11月末から先週まで訪米中だったため、記事更新が遅れたが、帰国後の9日、野田内閣の初の本格国会だった臨時国会が会期延長なしで閉幕となった。
10日に新首相登場直後の100日といわれる「ハネムーン」も終わった。臨時国会では、第3次補正予算と復興関連法案は成立したが、国家公務員給与引き下げ法案など、他の重要案件は軒並み先送りとなる。衆参ねじれ下で、今度も参議院で閣僚に対する問責決議が成立し、菅前内閣と同じように、次期通常国会前の更迭や内閣改造を考慮せざるを得ない状況に追い込まれた。
問責連発は政局優先の不毛の政略という批判も少なくない。しかし、野党側が監視機能を生かして、適材適所よりも党内融和を重視した組閣人事の問題点を衝き、政権の本質と弱点を国民に明らかにしたのであれば、問責決議にも効能ありといえるのではないか。
「用意周到・深謀遠慮型」の野田首相は、組閣に際して、党内対立解消を念頭に、融和優先のバランス人事を行った。もともと人事には顔触れと配置によって首相の政権構想や路線を国民にアピールするという一面がある。ところが、人事によるメッセージが伝わらない。内紛疲れを癒す「峠の茶屋内閣」で、いずれ立て直しが必要と指摘した人もいた。
組閣人事だけでなく、野田首相は「ハネムーン」の間、慎重答弁、無難外交など安全運転を心がけた。そのために首相独自の姿勢、カラー、ビジョンなどはほとんど見えず、国民の目に映ったのは、財務相時代以来の「財務省主導の消費増税路線」ばかりである。
内閣支持率はいまも40%台を維持して堅調だが(5日発表の共同通信の調査で44.6%)、じりじりと低落中で、早くも政権の年末危機や2012年3月危機が流れ始めた。問われているのは、安全運転かどうかではなく、首相自身の情報発信力と説明力だ。
衆参ねじれ下の政権の生命線は「国民との結託」と自覚し、「演説力」の野田首相はいまこそ反撃や摩擦、衝突を恐れずに自らの主張と目指す将来像を明確に語るべきだろう。9年前に民主党代表選に挑戦した野田首相に、まさか語るべき中身の用意がないとは思えないが。
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら