「自衛隊員の手榴弾事故」現状の対策は不十分な訳 旧式の危険な手榴弾が訓練でも使用されている

✎ 1〜 ✎ 69 ✎ 70 ✎ 71 ✎ 72
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ところが先述のように陸自ではその危険な手榴弾を大量に保有し、現役に留めている。しかも製造は60年以上は前であり、炸薬や信管も劣化している可能性がある。その意味でも危険であり、本来処分すべき代物だ。今後、手榴弾投擲訓練でこれを使用し続けるならばさらなる被害者が出る可能性がある。また掩体壕がない実戦において隊員が死傷する可能性も高くなる。

またMk2は重量が567グラムと重たい。普通科隊員によれば、1~2個しか携行できないという。対してM26は454グラム、M67は390グラムにすぎない。つまりMk2の重量はM26の1.25倍、M67 の1.45倍も重いということだ。個人装備の重量化が問題となっている昨今、無視していい問題ではない。

しかも陸自では20式小銃に40ミリグレネードランチャーを装備するので、そのグレネードを分隊隊員が、分担して携行する必要があるからなおさらだ。まして今後は対ドローンという点で、姿を隠すためのスモークグレネードをより多く携行しなければならなくなり、重いMk2はこの点でも問題だ。

安全対策を抜本的に見直す必要がある

しかも面妖なのは陸幕広報によるとMk2は米国製だけでなく国内でも製造されたが、ライセンス生産かどうか、わからず、M26もライセンス生産ではないという。ライセンス生産とはメーカーの同意を得て、設計図や仕様書を得、使用料を払って生産するものだ。陸自のMk2やM26は単にコピーしたものである可能性がある。そうであればオリジナルより劣っている可能性がある。それが今回の事故の原因に影響している可能性も否定できない。

Mk2は全部廃棄処分にして、新型の手榴弾を導入し、米軍や諸外国の教範を研究して安全対策を抜本的に見直す必要がある。同様にM26も廃棄し、相互運用互換性の面からは米軍と同じM67破片手榴弾、あるいは同等のものの採用が求められる。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事