スズメの減少率が絶滅危惧種レベルという危うさ 全国1000カ所で20年間、研究者と市民が調査

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2022年5月に大阪・夢洲の万博会場予定地にいたチュウシャクシギとハマシギ。この場所は人工島・夢洲の造成途中にできた湿地だが、会場整備の工事で消失する。環境団体は万博期間中の代替の湿地の確保や万博終了後の湿地や干潟の復元を万博協会や大阪市に求めている(写真:日本野鳥の会大阪支部長、納家仁氏) 

里地里山で生きものが減っている理由

今回注目された里地里山における生きものの減少について、モニ1000の結果とりまとめに検討委員として関わった大阪府立大学名誉教授の石井実さんは、水田生態系の変化に着目する。

もちろん、里地里山の変貌は化石燃料や化学肥料の登場により、1950年代に始まっている。里山の木々は薪炭に、落ち葉は堆肥に、草地の草は田畑の作業に必要な牛馬のエサになり、水田の数倍の面積の里山林が水田稲作を支えた。その里山林の価値が1950年代以降下がり、里山は荒れた。

岩手県一関市の里池里山の風景 (写真:佐藤良平氏)

農業の方法も大きく変わった。「水田をずっと一年中維持するのではなく、稲があるときだけ水を入れる。お風呂みたいな感じで使うときだけ水を入れる形になった。昔はメダカが泳いだ水路がなくなり、パイプラインができて蛇口をひねると水が出る。冬は土だけになり、水田は乾田化した。ニホンアカガエルは冬に山から降りてきて水田に産卵したものですが、乾田では卵を産めません。また、苗を植える段階で、農薬を苗の体に浸透させてしまう新しいタイプの農薬を使うようになった。水生昆虫はそれで減ってしまう」(石井さん)

スズメなどの鳥が減っている背景には、農業の変化もある。エサとなる昆虫などの減少に影響されたと考えられる。シギ・チドリの減少は、砂浜、干潟、水田を含む「湿地」の減少が主な要因だ。生物多様性を維持・保全するには、産業や土地利用のあり方という人間社会の基本を考え直さなくてはならない。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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