建物の両脇には、インド建国の立役者となった2人の人物、ネルーとアンベドカルの銅像が建てられている。
ネルーは独立したインドに近代化の礎を築いた人物で、イスラム教徒との共存という非宗教の枠組みを作った。そしてアンベドカルはインド憲法の起草者の代表であり、同時に貧しい人たちの立場に立って政治を進めた。2人とも、インド全体の骨格となる理念を唱え、実行した人物だ。
新たに加わった2人の銅像
ところが、最近になって両脇のこの2人に挟まれる形で、中央の一番目立つ場所に2人の人物の馬に乗った銅像が加えられた。いずれも、カルナータカ州の地域のヒーローだ。
なぜ彼らが改めてその価値を見直されることになったのか。この辺にインドの今の変化を見る手がかりがあるように感じた。
地元のアイデンティティーを確認して、新しいインドを作っていこうということなのだろう。もともとこの地域にあった伝統的な権威の再評価だ。マイソール王国であったり、さまざまな地元の勢力、地元の文化であったりする。そういったものを足元から見つめ直し自画像を探そうとするインドがある。
2024年の総選挙は、インド人民党の圧勝が予想されていた。経済好調なインドを牽引したモディ首相に3期目を託すことに反対する勢力がいないと思われていたからだ。大半の世論調査や新聞の論調が安定政権の継続を予想していた。
ところが大番狂わせが起きた。
インド人民党は地方政党と連立でかろうじて過半数は維持したものの、単独では議席数を大きく後退させることになった。
インド人民党政権の弱点はどこにあったのか。正直なところ、選挙結果が示すほど大きく後退することは予想できなかったのだが、このままインド人民党が勢力を伸ばしつづけることはないのではないかと感じていた。友人のインド政治の専門家も同様の意見だった。
インドの未来の政治の姿はどのように変わっていくのか。
その手がかりはカルナータカで感じとれるような気がした。総選挙での圧倒的な優勢が伝えられるなかで、インド人民党はカルナータカの地方選挙で惜敗を喫していたからだ。これは1つの地方州の小さな選挙ではあるかもしれないが、筆者にとっては特筆すべき「事件」であった。カルナータカでは総選挙の結果も、インド人民党は大きく後退することになった。
何が起きていたのかを詳しく見ていくと、インド人民党が盤石に見えたインドの将来の政治の盲点を知るうえで忘れてはならないポイントが浮かび上がってきた。カルナータカの政治情勢はインド人民党政権の地方と中央との関係という意味で注目に値する。
カルナータカ州はインド人民党の南インド唯一の政権州だったため、地方議会選とはいえ、カルナータカ州での敗北はインド人民党のアキレス腱を示すものだ。インド人民党としては早めに手を打っておかないと、同じ構造を持った権力基盤のもろさが全国に拡大する恐れがある。
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