地震に台風…「クルマ×防災」はどうなっているか 業界団体や自動車メーカーの取り組みと課題

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まず「被災時の過ごし方」では、クルマから外部への給電機能を装備するモデルが増えている。

EVや燃料電池車の場合、専用機器を介するシステムがあるほか、ハイブリッド車でも100V/1500W電源の標準装備化が進んでいる。

日産「セレナ e-POWER」に装備される100V/1500W電源(写真:日産自動車)
日産「セレナ e-POWER」に装備される100V/1500W電源(写真:日産自動車)

また、日産「ブルー・スイッチ」に代表されるような、災害発生後の電源確保のために、地方自治体や自動車販売店と連携する動きも全国に広がってきたところだ。

一方で、前述のJAFユーザーテストのような、災害時の具体的なクルマとの向き合い方についての情報公開は、あまり目立たない印象がある。

もっと具体的なガイドラインを

こうした領域の自動車メーカーの対応方法について、新車開発に携わる各社のエンジニアらに意見を聞いたことがある。

その際、よく出てきたのが「性能限界」という表現だった。

いわゆる「走破性」について、モデルごとに違いがあるのは当然だ。本格的な4輪駆動車と、街乗り用のFF(前輪駆動車)では、走破できる路面の状況や、冠水時の水深は違う。

本格的な4輪駆動車の場合、登坂能力の目安として、デバーチャーアングルなどがカタログに記載され、悪路や岩場での走行イメージ動画なども公開されてはいるものの、性能限界を明確に示すものではない。

メーカー各社には、性能限界に関する社内基準やテスト方法があるはずだが、報道陣向けの新車試乗会の場でも、そうした踏み込んだ内容が紹介されることはない。

つまり災害時、または災害に遭遇する可能性が近い状況での「クルマの使い方」は、ユーザーの自己責任だと言える。

内閣府や消防庁、地方自治体などからも、そうした状況では「クルマの利用は控えること」、または「慎重に利用するように」といった「呼びかけ」にとどまっている状況だ。

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今後は、自動車メーカー、自動車販売店、日本自動車工業会などが連携して、こうした領域への対応策をガイドラインとして明確化するべきであろう。

あわせて、インフラ側の整備も必要だ。台風や豪雪の場合、高速道路では計画的な交通規制を実施するケースが増えてきたが、一般道路では急な気象の変化に対応する仕組みがしっかりと構築されているとは言えない。

一般道でも、過去の事例を検証したうえで、ゲリラ豪雨などを想定して重点地域にAIカメラを設置し、早めに交通規制をかけることを考えるべきではないだろうか。

なお現在、自動車メーカー各社に「災害時の具体的なクルマとの向き合い方」について回答を求めている最中だ。本稿執筆時点では各社とも「対応を検討中」の段階であるため、回答ののち、さらなる取材を経て改めてお届けしたい。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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