シャープ、家電技術を活用し理想のEVを開発へ 目指すは"生活空間"として機能するクルマの投入

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鴻海製のモデルC
LDK+のベースとなる鴻海製のモデルC(筆者撮影)

両社の強みを生かしたこの協業は、EV市場に新たな価値を提供することが期待されている。シャープの家電技術やブランド力と、鴻海の製造ノウハウや既存のEVプラットフォームの組み合わせは、競争の激しいEV市場において独自のポジションを確立する可能性を秘めている。

世界最大の電子機器受託生産企業として知られる鴻海は、その強みを生かしEV産業に参入、わずか数年で大きな存在感を示している。

鴻海のEV事業は、EMSと自社ブランドの両輪で展開されている。EMS(Electronics Manufacturing Services)では、他の自動車メーカーやブランドのためにEVの設計・製造を受託する。一方で、自社ブランドのEV開発も積極的に進めている。

2022年3月、鴻海は初のEVとなる商用バス「モデルT」を台湾南部の高雄市の路線バス事業者に納入した。個人向け市場では、SUVの「モデルC」と上級セダンの「モデルE」の投入を予定している。さらに、台湾の自動車メーカー裕隆集団と提携し、「納智捷(ラクスジェン)」ブランドでEVを販売。「ラクスジェンn7」は鴻海にとって最初の市販車となった。

空間+で拡大目指すシャープのEV

種谷元隆CTO、関潤CSO
シャープの種谷元隆CTO(左)と、鴻海の関潤CSO(筆者撮影)

鴻海精密工業のEV事業の関潤CSOは鴻海の実力を以下のようなエピソードで示唆した。

「日本の自動車メーカーの幹部に試乗してもらうと、口をそろえて『スマホは作れるとわかっていたが、まさか車が作れるとは思わなかった』と言われる」

現在、鴻海は「モデルC」「モデルB」(クロスオーバーSUV)、「モデルV」(ピックアップトラック)、「モデルN」(バン・トラック)など、多様なEVの開発を進めている。2025年までに世界のEV市場の5%のシェア獲得を目標とし、EMSと自社ブランド開発の両方を活用した多角的な戦略を展開している。

シャープのLDK+コンセプトは、家庭用途にとどまらない幅広い展開を目指している。種谷氏は次のように述べている。「LDK+という言葉からはB2C、家とのつながりの中での価値を皆さん頭に思い浮かべていただけると思うんです。けれども、それにとどまらず、B2B2CであるとかB2Bの領域であればオフィス+であったり、ワークプレイス+という新しい世界観にこのLDK+の世界を広げていきたい」

種谷氏はさらに、このコンセプトが個々のユーザーのニーズに応える可能性を強調し、「皆さん一人一人の、ちょっとした思いであったり、こうあったらいいな、というようなところに立地できる、そういうEVを皆さんに提供していきたい」と語った。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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