“焼き牛丼”で国民食に参入 三光マーケティングフーズの新たな挑戦
東京都人形町、昼時にサラリーマンが長い列を作る見慣れない牛丼屋がある。牛丼といっても従来とは一味違う。どんぶり飯の上に乗るのは「煮た」牛肉ではなく、「焼いた」牛肉。「焼き牛丼」だ。
この焼き牛丼屋は「東京チカラめし」。2011年6月、池袋に1号店をオープンしたばかりの新興チェーンながら、11年11月末時点で都内を中心に22店まで急成長。2012年6月末までに50店舗超へと拡大する計画だ。焼き牛丼280円(並盛り)という値頃感が、男性客を中心に支持を集めている。調理器具などを納品する業者は「あっという間に1000店に達する勢いだ」と驚きの声を上げる。
この焼き牛丼チェーンを運営するのは都内中心に150店程度の居酒屋を展開する三光マーケティングフーズ(以下、三光フーズ)だ。同社は過去、「東方見聞録」で個室居酒屋ブームを作り、近年は「金の蔵Jr.」で全品270円の低価格居酒屋を業界に先駆けて打ち出すなど、居酒屋業界を席巻してきた。
主力の居酒屋は頭打ち 激戦“牛丼”市場に参入
三光フーズが主力とする居酒屋市場は1992年の1兆4600億円をピークに1兆円程度まで縮小している。業界大手のワタミは「和民」が低収益にあえぎ、「庄や」などを展開する大庄は11年8月期に過去最大の100店舗近いリストラを余儀なくされた。
その中で三光フーズは営業利益率10%と健闘している。それでも、「居酒屋では将来像が描けない」(平林隆広専務)との強烈な危機感を抱き、うどんの「楽釜製麺所」など非居酒屋業態の開発に力を入れていた。