ハマってからではもう遅い「相続の落とし穴」4つ 「心情的な原因」でこじれてしまうことも多い

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被相続人が日ごろの世話に対する感謝の気持ちとして、贈与するケースもあります。親族間で契約書を作成することはあまりないと思われますが、被相続人にエンディングノートへ記載してもらうなどして、贈与を証拠化することが重要です。また、贈与と認められても特別受益として持戻しの対象とされる可能性があるので、持戻し免除をしてもらえるよう、被相続人に確認しておくことをおすすめします(民法903条3項)。

生命保険金も遺産になる場合がある?

Q.相続税対策をしながら遺産を長男に多く渡すため、預貯金2000万円のうち1500万円を生命保険に回し、その保険金の受取人を長男として指名した。これで預貯金の残り500万円だけが遺産分割の対象となり、この500万円を長男を含む相続人全員で法定相続分に従って分割することになるはずだが……。

A.遺産に対して生命保険金の比率が不自然に高い場合、例外的に生命保険金も特別受益になることがあります。

このように生命保険を利用することで、被相続人は特定の相続人が有利になるよう遺産を分配することが可能となりますが、遺産分割の際の不公平感やトラブルの原因となることもあります。

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生命保険金は、被相続人が特定の人を受取人として指定していた場合、指定された人が固有の権利として請求権を取得するので、遺産分割の対象になりません。そして、現状、ほとんどの保険会社では約款で受取人が記載されていない場合でも受取人をどうするか決めてあるので、生命保険金が遺産になることはほとんどありません。

また、生命保険金は被相続人から相続人への贈与ではないので、特別受益にも当たらないのが原則です。

しかし、生命保険金と遺産の比率があまりに偏っている(生命保険金のほうが預貯金よりも多いなど)場合、生命保険金を無視するのは明らかに不公平になります。そのため、生命保険金の遺産に対する比率が不自然に高い(遺産総額の50%以上)場合は、例外的に生命保険金が特別受益になり、相続財産の持戻しの対象となることがあります。

この例では長男の受け取る生命保険金の額は遺産と比べて明らかに多すぎるため、長男が受け取った生命保険金は特別受益とされてしまい、遺産からは1円も受け取れないという結果になる可能性があります。

古山 隼也 弁護士

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こやま しゅんや / Shunya Koyama

古山綜合法律事務所 代表弁護士(大阪弁護士会所属)。1980年生まれ。大阪府出身。大阪市立大学(現・大阪公立大学)法学部卒業。大阪市職員として勤務後、京都大学大学院法学研究科卒業。2011年に司法試験合格。大阪市内弁護士法人、京都市内法律事務所勤務を経て、「生活を支える法律事務所はもっと身近な場所にあるべきだ」という思いから、2017年に出身地である大阪府枚方市に古山綜合法律事務所を設立。地域密着型の法律事務所として、個人の身近な法律問題をサポートしている。大阪市職員時代に介護保険を担当していた経験から高齢者問題に明るく、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格も有していることから、とくに相続など税務に関わる案件を得意とする。

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