「日用雑貨品卸」、全国で再編が相次ぐワケ 大手2社以外は四苦八苦

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EC市場が本格的に離陸するとなれば、メーカー自身も卸との付き合いを見直す必要があるだろう。花王は1966年に花王製品専門の卸である最初の販社を設立し、外部の卸を使わない「直販モデル」を構築した。「問屋有用論を唱えたライオンは救世主のように扱われ、花王石鹸(現花王)の戦略は多方面から強い批判を浴びた」(『経営は十年にして成らず』小社刊)とのことだが、花王の営業利益率は14年度9.5%だったのに比べ、ライオンは3.4%(ともに12月決算)。収益力の差は歴然だ。

花王のように直販を行うメリットは、商品の品切れや過剰な在庫を限りなくゼロに近づけることができる点にある。それにより、どの商品がいつ、どのように売れているかといった細かなデータの把握やタイムリーな商品開発も実現可能になるのだ。その分販社の人件費などがかかるが、卸に手数料やリベートを支払わずに済み、結果高い収益性を実現している。今や日本の日用品メーカーは卸に依存しない花王、依存するその他で勢力図が出来上がっている。

独自の流通モデルで成果上げる花王

花王が中国で展開するおむつ商品(撮影:尾形文繁)

その花王は現在、海外市場でも果敢に独自の流通モデルで攻めている。特に中国市場において売れ筋の子ども用紙おむつの店頭シェアは、後発参入ながら2014年末にユニ・チャームを追い抜いた。日本とは違い2011年11月に中国の化粧品メーカーと共同で販売・マーケティングを行っているが、外部の卸を使わないECチャネルを含めれば、直販の売上高比率は現在約6割あると見られる。

インドネシアでも勢いづいている。1年前はほぼゼロに近かった子ども用紙おむつのシェアは、2014年10月から現地生産を開始したこともあり、現在5%まで上昇している。直販はまだ一部だが、「卸任せではなく、現地スタッフ自らが消費者のニーズ動向を探していることが奏功している」(花王関係者)という。

対してユニ・チャームは日本と同じく、中国やインドネシアでも現地の卸会社を活用している。その点両社の在庫管理体制には差があると見られ、同社のアジア事業は2015年1~6月期に前年同期比営業減益となった。アジア事業の営業利益率は、2010年1~6月期に15.3%あったが、2015年1~6月期には9%へ落ち込んでいる。

日本に比べ小売店の少ない海外ではECの対応も欠かせなくなっており、ユニ・チャームに限らず卸に依存する国内メーカーは、日本と違うメーカー主導の流通体系を作らなければならない。せっかくのインバウンド特需で認知度の上がった自社商品を海外へ売りこむチャンスを逃がしてしまうことにもなりかねない。

そうなると卸はどうなるか。海外展開で国内メーカーと付き合うことは難しくなり、「国内で限られたパイを奪うしかない」(前出の中堅卸幹部)。しかし、そこはPALTACのような大手が資本力で低コストを武器に攻めてきている。小売り再編、そしてEC普及に伴う直販化が進む懸念。落日の日雑卸にとって、現下の市場環境急変は遠からず、もう一段の再編が起きることを示しているのかもしれない。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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