「日用雑貨品卸」、全国で再編が相次ぐワケ 大手2社以外は四苦八苦
こうして再編・集約されながらも独自性を発揮し続けている日雑卸だが、目下今まで以上に大きな難題に直面している。それは小売業界の再編だ。
台風の目はイオンだ。同社は9月1日、グループのドラッグストア4社統合を完了させた。2014年11月に買収した業界6位のウエルシアホールディングスの傘下に、同10位のCFSコーポレーション(「ハックドラッグ」を展開)など3社を取り込んだ。これによりイオンはマツモトキヨシホールディングスを抜き、売上高で業界首位に躍り出た。
他にもツルハホールディングス(HD)は7月、四国で首位のレデイ薬局に対しレデイの筆頭株主であるフジと共同買収を発表した(買収完了は11月メド)。ツルハは来期からマツキヨと売り上げで肩を並べる規模となる。
小売り側からの返品圧力に言い返せず
小売業界の再編が進めば、当然卸に対する小売り側のバイイングパワーが強まる。ある大手の卸幹部は「最近小売り側からの返品圧力がすごい。だけど言い返すことができない」と話す。「既にメーカーからの仕入れはほぼ原価だし、小売りには発言できない。メーカーからリベートをもらい何とかやっていける状況だ」(別の卸関係者)との声もある。
この話を裏付けるように、現に日用雑貨卸業界の利益は近年ほとんどでていない(右グラフ)。大手2社のPALTAC、あらたを除けば期間利益を投資に回せる余力はない。5000万人の購買情報を有するマーケティング会社、カスタマー・コミュニケーションズの米倉裕之社長は「(日雑卸各社は)価格競争を仕掛けて帳合(=小売りと卸との間の取引関係)を奪い合うやり方はもう限界に来ている」と指摘する。
さらに逆風となるのが、ネット通販(EC)の台頭だ。卸にとってネット通販市場が伸びることは有力な小売りチャネルが増えることであり、サプライチェーンに介在できれば問題は無い。日雑商品の流通情報ネットワークを構築するプラネットの田上正勝社長は「今はまだできていないが、今後はECの販売データを収集していきたい。アマゾンと連携する必要性も感じている」と言う。今後、日雑商品でECの需要が伸びることは確実視されている。
卸が恐れるべき点は、メーカーによる直販だ。現にアマゾン上では「花王ストア」や「P&Gストア」など、メーカーが独自にブランドストアを開設している。その他、自社のページでECサイトを開設しているケースもある。こうした自前のECストアでは現状、元々自前の販売会社を通じて小売店に商品を卸している花王を除けばメーカーはほぼ卸を活用している。ただ、ここの売り上げが無視できない規模になれば、花王のようにメーカー自身がECに直販し、卸を中抜きすることもあり得る。
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