これからの不動産の価値を決める"納得"の物差し 単純な損得勘定では測れない新しい指標に注目

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こうした中、私たちは「不動産」とどのように向き合っていけばよいのでしょうか。

テレビや新聞、雑誌、ネットなどメディアでよく取り上げられる「賃貸か持ち家か」「マンションか一戸建てか」「都心か地方か」「いつが買い時か、売り時か」「住宅ローンは変動か固定か」といった明快なテーマは、いつの時代でも一定のニーズがあります。

しかし、このような単純図式化された問いは、実は今となっては本質的ではなく、したがってあまり意味がないかもしれません。

それはなぜでしょうか。こうしたテーマは往々にして「経済合理性」を論じています。要は「損得勘定」です。

もちろん経済合理性は超重要。高く買うより少しでも安く買えた方がいいに決まっています。買ったそばから不動産の価値がダダ下がりしてX年後に無価値あるいはマイナス価値となってしまうより、価値が落ちない、落ちにくい方がいいでしょうし、筆者も日ごろその重要性を説いています。

注意したいのは、こうした「損得勘定を語る前提条件が大きく変わる可能性が高い」ということなのです。一般には論じられていない「古くて新しい指標」がこれから新たに加わり、スタンダードになります。

そこには「自治体経営力」「災害対応力」「省エネ性能」といった聞き慣れたワードがいっそう強調されるほか、「好き」とか「愛着」とか「コミュニティ」といった、一見損得とは対極にあると思えるようなワードが、経済合理的にも非常に大事になる時代がやってくるからです。

価値を左右する自治体経営力

たとえば「自治体経営力」。

どの自治体も例外なく、住民税や固定資産税をはじめとする税収(歳入)で賄われています。たとえば働き盛りの世代が多く流入する自治体では、税収もおのずと増加します。だからこそ自治体サービスもより充実させることができ、住みよい街が形成されるのです。

一方、若年層の流入がなく、高齢化が進む自治体では、税収も乏しく、高齢者向けのサービスに支出はかさみ、そのままいくとにっちもさっちもいかなくなります。

現時点では大きな差異がないように思える各自治体の経営ですが、団塊世代が一通りこの世からいなくなり、人口減少が進んだころはどうなっているでしょうか? 上下水道や道路・橋・公園といった設備・施設の修繕や更新もままならず、住みにくくなっている未来が容易に想像できるでしょう。

この手の話はある日突然現れるわけではなく、じわりじわりと進行するため事態に気づきにくく、前記事でも触れた「ゆでガエルのワナ」に陥りがちです。ゆっくりと進行する環境変化に慣れてしまい、気づいたころには取り返しのつかない事態に陥っているわけです。

多くの自治体が、財政についてオンラインで公開しています。過去10年くらいの歳出と歳入の推移やその内訳について眺めてみると傾向がわかります。

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