ほかに、原発重大事故時の指揮系統の問題についても触れた。原子力災害対策特別措置法では、国の対策本部が地元市町村に対し、UPZの住民の屋内退避を指示することになっている。
一方、災害対策基本法では国に法的な指示権限がなく、市町村の判断で住民に避難指示を出すべきケースもありうる。こうした2つの法律が別立てで存在することによる自治体の混乱を避けるため、法体系を整備するよう要望した。
さらに現行の労働安全衛生法では、労働災害の急迫した危険があるときは労働者を作業場から退避させる義務が事業者にある。そのため、緊急時の高線量下において、ヨウ素剤をUPZの住民に配布したり、地震で陥没した道路を復旧したり、避難住民を搬送するバス運転手を確保したりする災害対応が難しい法体系になっている。泉田氏はこうした法体系の整理に向け、規制委が国への勧告権を行使するよう求めた。
議論は平行線のまま
こうした要求に対し田中委員長は、「法体系ということになると、いま具体的なイメージがわからないので、もう少し検討させてほしい」「労働安全衛生法は厚生労働省の所掌業務なので、よく協議しないと」などと返答。国への勧告権行使についても、「法的には(規制委は)勧告権を持つが、それなりに意義のある勧告でないと。勧告しただけで終わるのは私としては本意ではない」と慎重な姿勢を示した。
また、SPEEDIの活用案に関しては、「SPEEDIでは絶対値は評価できない。ソースターム(放射性物質の放出源情報)は事故時にはわからず、SPEEDIでの避難は混乱の元になる」「SPEEDIを使ってヨウ素剤を配るのは基本的に必ずしも正しくないと思っている」などと否定的な考えを表明した。
UPZの住民に対するヨウ素剤の事前配布についても「本当に必要であれば、事前配布を含めて柔軟に取り組んでいただければいい」と回答。だが泉田氏は、事前配布が国の指針に入っていないと、予算がすべて自治体負担になり対応できないとして、理解を求めた。泉田氏は地元の声を防災対策に生かすため、規制委と知事会が定期的に協議する場を設置することも要請。これに対し田中氏は、自治体の声を聴く必要性は認めたものの、「定期協議というのは、なかなか難しい問題」と答えた。
面談後、泉田氏は記者団の取材に応じた。初会談の印象について泉田氏は、「現行の法体系に矛盾が多々あることを私は4年前から指摘しているが、ようやく面談がかなって委員長に認識してもらえたのは一歩前進」と語り、「今後、内閣府とも協力して検討を進めてほしい」と期待を示した。
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