多発する「男性差別の炎上」で露呈した怒りの正体 牛角、しまむら、フリーアナ…なぜ炎上が続いたのか

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冷静に見たらこれだけ「男性差別」には結びつきにくいものが大きな話題になってしまうのは、「大炎上」「物議」「批判殺到」などと感情をあおるネットメディアが多いから。これらのネガティブなフレーズを交えたタイトルはPVなどの数字を稼げるため、複数のメディアが一部の声を誇張する形で報じています。

「把握」「考慮」で無用な対立は減る

「男性差別」の話題が連鎖した背景にあるのは、ある話題をネガティブな方向へ進め、無用な議論を生み出そうとする、一部の人とネットメディアのタッグ。世の中にいがみ合う構図を作り出すような両者の関係性がトラウデンさんと牛角の話題を「男性差別」につなげてしまったという感は否めないのです。

ただ、一部の人もネットメディアも、本気で怒り、問題提起したいわけではないため、次の話題が出れば関心はそちらに移っていくのでしょう。まるで焼き畑農業のようにあちらこちらを燃やしていくという行動パターンは過剰に傷つけられる人を増やすだけで、社会にも人間にも優しくないように見えます。

そんな一部の人とネットメディアによるネガティブな連鎖を止めるためにはどうすればいいのか。

大切なのは1人ひとりが「できるだけ正確な状況を把握しようとする」「前提や理由がないか確認し、それらがあれば考慮する」という姿勢を持つこと。たとえば牛角の件では、「『なぜ女性だけを半額にしたのか』を知るためにネット上のリリースを見る」ことはその第一歩でしょう。

その他のケースでも、たとえば「レディースデーを導入した店の狙い」や「女性専用車両が導入された経緯」などを知ろうとする。あるいは、「逆に男性だけが得られていることはないのか」なども考慮する。

1人ひとりがこれらの姿勢を持つことによって、過剰に傷つけられる人や無用な対立構図を減らせるのではないでしょうか。

すでにネット上には「男性差別だ」と安易に決め付けるようなコメントに対して、「浅い」「ダサい」などと突き放すような声も目立ちはじめています。

中でも変化を感じさせられるのは、「男女を逆にしたら問題になる」という定番の指摘を疑問視する声が出てきたこと。このフレーズを持ち出して無闇に「男女差別だ」と指摘する人を疑う冷静さを持つ人が増えているのでしょう。

このような声が広がり、ネットメディアのあおり記事をスルーできる人が増えるほど、今夏のような連鎖は起きにくくなることが推察されます。もちろんまだまだ性差別を指摘され、改善されるべきテーマは多く、その際は冷静に議論ができる社会でありたいところです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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