今さら聞けない「ポピュリズムが台頭する」なぜ そもそもポピュリズムは「悪」なのか?

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非経済的側面から排外主義になるケースを、ポーランドを例に見てみましょう。2015年にイスラーム系難民がギリシアとイタリアに押し寄せたのですが、対応策としてEU理事会がEU加盟各国で難民を分担して受け入れることを決定します。

ちょうどこの決定がなされる頃、ポーランドでは総選挙が行なわれ、「法と正義」という政党は争点にこの難民問題を持ち出して、難民が病気を持ち込む、移民はポーランドの文化を尊重しない、移民が女性を襲うといった恐怖心を煽るようなキャンペーンを張ります。経済的な理由は掲げていないのです。

ヨーロッパにおける「反EU=反移民」の構図

この過程からわかるように、反EUというものが反移民に付随して強調されます。ヨーロッパの排外主義(反移民)の運動が反EUとなることは、イギリスのブレグジットを見ても明らかです。

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ヨーロッパでは主権国家の上位にEUがあって、移民を押し付けているのはEUなので反EU=反移民になるのですが、EUのようなものがないアメリカや日本は反移民と何が結びつくのでしょうか。それが日本やアメリカで使われるようになった反グローバリズムという言葉です。グローバリズムが移民を増大させたり、LGBTQ問題を引き起こしたと、すべての悪の元凶であると批判するのです。

では、このグローバリズムとは何なのかといえば、正体のない幽霊なので、ユダヤ人だ、国際金融資本だ、ディープステートだと、いいたい放題の陰謀論と接続されていくのです。

EUに主権を一部譲渡しているヨーロッパ各国では、EUをなぜつくったのかという原点から、ヨーロッパに住む人々の共通の記憶としてヨーロッパの歴史と自国の歴史を接続させようとする試みが続けられていました。しかし反EUの声が高まると、自国中心的な歴史修正主義が出てきます。アメリカや日本でも、陰謀論と結ぶ歴史修正主義が排外主義と手を携えながら忍びよるようにこの20年で広まりを見せています。

荒巻 豊志 東進ハイスクール講師

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あらまき とよし / Toyoshi Aramaki

1964年福岡県生まれ。1988年東京学芸大学卒業、1990年松下政経塾卒塾。現在は東進ハイスクールで「東大世界史」を担当し、「受験世界史に荒巻あり」といわれる超実力人気講師。歴史の因果関係を明らかにしながら進んでいくハイテンションかつメリハリのある授業は、ダイナミックに歴史のストーリーを理解させてくれる。著者に『荒巻の世界史の見取り図』、監修書に『眠れなくなるほど面白い 図解 地政学の話』などがある。

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