今さら聞けない「ポピュリズムが台頭する」なぜ そもそもポピュリズムは「悪」なのか?

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20世紀から21世紀にかけて農業社会から工業化社会へ、さらにはポスト工業化社会へと産業構造が変化する中で、農業組合や労働組合に組織されない人々が急増していきました。特定の支持政党を持たない無党派層も増えています。こうした人々へアプローチするのがポピュリズムであるとすれば、確かにポピュリズムは民主主義を活性化することにつながる気もします。

このポピュリズムが急速に広がった背景には移民をめぐる状況があるといわれています。そのことについて見ていきましょう。

何が排外主義を生むのか

21世紀のポピュリズムは多くの民主主義国で力を持ってきていますが、ヨーロッパのポピュリズムの背景にあるものは、移民の増加といわれています。ヨーロッパでは17世紀以降、国によっては多くの移民を受け入れてきました。特にオランダやイギリスのようにアジア、アフリカへ力を伸ばした国はそうでした。

第二次世界大戦後はドイツのように労働力不足から多くのトルコ人が移住するなど、移民自体は徐々に増えてきたといっていいでしょう。その過程で移民が自分たちの仕事を奪っていったとか、移民が低賃金で働くから自分たちの給料も減った、といった経済的要因で排外主義が広がったというふうに説明されます。

アメリカ合衆国でも中西部、特にイリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオ、ウィスコンシンといった州はラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれ、産業構造の変化に伴って雇用が失われた労働者が、ポピュリストであるトランプを支持したといわれます。

(画像:大和書房提供)

確かにポピュリズムは「下」からの運動ですから、この説明はしっくりきます。ところが、こうした低所得層が外国人労働者を憎む排外主義につながるという説明は、政治学的に見るとかなり怪しいようです。

『欧州の排外主義とナショナリズム』(中井遼/新泉社)は、経済的な要因が排外主義を生み出すという一見して俗耳に入りやすい理論に対して、多くの統計を分析しながら、排外主義の広がりは経済的な要因よりも文化的態度といった非経済的な要因のほうが大きいことを示しています。排外主義的な傾向を持つ人は所得の高低、失業中かそうでないか、年齢の違い、男女の差といったものにあまり左右されていないのです。

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