政府債務残高対GDP比の値は、分子が増えれば上昇し、分母が増えれば低下する。したがって、それぞれの要因に分解すればこの比率がなぜ変化したかがわかる。
「政府債務残高対GDP」を決める4つの要因とは?
まず、分子である政府債務残高が増える要因を考えよう。当然ながら、財政収支が赤字であれば、その赤字の分だけ政府債務残高は増加する。ここを特に、利払費を含まない財政収支である基礎的財政収支と、利払費とに分けてみることにしよう。基礎的財政収支が赤字だとその分政府債務残高は増える。利払費が払われればその分(財政収支の赤字要因となるから)政府債務残高は増える。
他方、分母であるGDPが増える要因を考えよう。このGDPは名目額である。したがって、実質GDPが増えれば(物価水準が一定として)名目GDPが増える。物価水準を表すGDPデフレーターが上昇すれば(実質GDPが一定として)名目GDPが増える。
以上より、政府債務残高対GDP比の変動要因は、次のようにまとめられる。基礎的財政収支が赤字であるとその赤字額の分だけ、この比率は上昇する(基礎的財政収支要因)。利払費が払われればその分だけ、この比率は上昇する(利払費要因)。実質GDPが増えればその分だけ、この比率は低下する(実質GDP成長率要因)。GDPデフレーターが上昇すればその分だけ、この比率は低下する(GDPデフレーター要因)。
この考えに基づいた分析が、『平成27年度経済財政白書』に示されている。それを集約したのが次の図である。
この図では、先にあげた4つの要因が、横軸より上(プラス)になると債務残高対GDP比の上昇要因に、下(マイナス)になると低下要因となることを意味する。
まず、『経済財政白書』は、この図についてどう解説しているか、引用してみよう。「1980年代以降でみると、債務残高対GDP比が減少したのは、経済成長と物価の上昇、基礎的財政収支の改善がみられた1990年代初頭までである。
一方で、最近の動きをみると、東日本大震災があった2011年度以降、債務残高対GDP比の上昇傾向に歯止めがかかりつつある。特に2013年度以降、経済再生と景気回復による税収増、デフレ脱却に向けた動きの進展等により、実質GDP成長率要因、基礎的財政収支要因、GDPデフレーター要因が改善傾向となっており、GDPデフレーター要因については、2014年度および2015年度は、1990年代以来の債務残高対GDP比の押下げ要因となる見込みである。」
これを要約して、『経済財政白書』では、「債務状況の悪化は基礎的財政収支赤字の拡大が主因、名目経済成長低迷も影響」としている。
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