西島秀俊の「ハリウッドデビュー作」がすごかった 配信元の「Apple TV+」の認知度は低いけれど良作
西島のほかに、ジュディ・オング、YOU、國村隼など、日本人でも注目せざるをえない名優たちが重要な役で出演しているのだ。今年3月、惜しまれつつなくなった寺田農も印象的な役で出演していて、追悼メッセージもクレジットされている。
ジュディ・オングはマサの母親ノリコ役。京都の古く裕福な家に生まれた人物で、はんなり京都ことばを話す。異国人の嫁にはちょっと厳しい目を向けるイケズさも。國村はロボット工学者タナカユウキ。知性的だがどこか食えないところのあるくせ者。YOUは京都のやくざの組長(寺田)の娘ヒメで、父の跡を継ぐつもりだが、周囲には敵もいて……といういわゆるやくざ映画の抗争的な環境に身を置いている。
國村は『ブラック・レイン』、YOUは『誰も知らない』など海外でも馴染みのある俳優であろう。西島は『ドライブ・マイ・カー』がある。日本でも知らない人のいない有名俳優であり、海外でも知られた日本人俳優とは最強である。
感心するのは、西島と國村とジュディ・オングは英語セリフを流暢に語っていることである。やっぱり、ハリウッド大手と契約するだけあって英語でセリフを話すのは当然の前提なのかもしれない。
日本語と英語(日本語字幕)バージョンがあるので、好みのほうを選択できるのでご安心を。だが、國村の英語が吹き替えかと一瞬思うほどイケボなナレーションもあって、英語バージョンもおすすめである。
京都舞台なのに、ラーメン屋が「一蘭」
欧米が作る日本を題材にした作品はとかく、日本への間違ったイメージが先行しがちで、日本人には違和感が拭えないことも否めない。
昨今は、真田広之がプロデュースした『SHOGUN将軍』が誤解を埋めるべく尽力しているように感じるが、『サニー』の描く日本・京都はロボットの活躍する近未来とはいえ、やっぱりちょっとヘンテコである。
京都ロケも行っていて、おなじみ五重塔から、祇園の町並みや1960年代の近代建築を代表する国立京都国際会館(大谷幸夫設計)でのロケも敢行しているのだが、夜の祇園が歌舞伎町とごっちゃになっていませんか? というようなところもあって気になるといえば気になる。ラーメン店が福岡に本店がある一蘭であるのもあえてなのか。
ただ、『ブレードランナー』(1982年)リスペクトのような、近未来東京ならぬ近未来京都のような、レトロフィーチャー的なセンスは悪くはない。銭湯やあやしいガジェットショップなどは絵になるし、マサの乗ったバイクがサイドカーなのは無駄にかっこいい。YOUの着物姿もエキゾチックである。
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