通信設備世界2位に台頭、中国・ファーウェイ(華為技術)の光と影
08年に特許申請数でパナソニックを上回り世界首位になるなど、研究開発に対するファーウェイの積極投資も目立っている。10年度の売上高に対する研究開発投資比率8・9%は、サムスンやパナソニックなどを大きく上回る。研究開発の中身は、日本企業が重視する基礎研究や要素研究の先端分野ではなく、前述のような顧客企業の要求に応える目的が中心。ファーウェイは自社の研究開発のスタイルを「顧客志向のイノベーション」と呼んでいる。
ファーウェイは、今や新興国だけでなく、先進国の大手通信事業者とも関係を深めている。欧州ではブリティッシュ・テレコムやドイツ・テレコムが大口顧客に名を連ねる。日本では05年に現地法人を設立し、イー・モバイルやソフトバンクに主に納入しており、端末開発を中心に300人超の人員を抱えるまでになった。11年3月には中国企業として初めて日本経団連にも加盟した。
中国の理系学生にとって人気の就職先であり、外資系金融機関も取引関係を結ぼうと躍起になるファーウェイは、母国・中国ではすでにエクセレントカンパニーとしての地位を確立している。
「軍が背後に」の懸念 米国政府へ公開書簡
まさに“昇竜の勢い”だが、アキレス腱も抱えている。世界最大の米国市場で、ファーウェイは「人民解放軍がバックについた不透明企業」と見なされているのだ。
08年、現地IT大手スリーコムの買収に乗り出したが、米政府の外国投資委員会(CFIUS)が安全保障上の懸念を表明したため断念。10年には大手通信事業者スプリント・ネクステルが同様に安保上の懸念があるとして、携帯電話用通信設備の入札対象からファーウェイと中国同業・中興通訊(ZTE)を排除した。さらに11年2月には、前年5月に行った米ITベンチャー・3リーフ社の買収についてCFIUSからまたも安保上の懸念が示され、買収撤回に追い込まれている。