参議院は必要か、ねじれで国政の機能不全が常態化、抜本的改革を
政治の停滞が大きな問題になって久しい。これには、首相の資質、与党の経験不足や意思不統一などいくつかの要因があるが、その一つが国会の「ねじれ」だ。そもそも、参議院に存在意義はあるのか。
「二院制は何の役に立つのか。もし第二院が第一院と同じ結論を出すなら存在意義はない。異なる結論を出すなら有害である」と喝破したのは、フランス革命の指導者、エマニュエル=ジョセフ・シェイエスだ。
第二院とは、普通は上院とか貴族院などと呼ばれ、日本では参議院のことである。政治学では、二院制より一院制のほうが急進民主主義的な制度とされている。
西欧が絶対主義から議会制民主主義に移行する過渡期、民選議員で構成される下院は、興隆しつつある市民階級(ブルジョアジー)の利害を代表して急進的政策を主張したのに対し、世襲や勅任による議員から成る上院は、国王や貴族などの旧体制(アンシャン・レジーム)の利益を守り、市民階級による急進的な変革にブレーキをかける役割を担った。
日本でも、明治憲法下における貴族院は、全員民選議員から成る衆議院とは異なり、皇族議員・華族議員・勅任議員で構成され、衆議院の議決をチェックして君主制を維持する役割を担った。市民階級の立場に立つ急進主義者のシェイエスが「もし第二院が第一院と異なった結論を出すなら第二院は有害」と述べたのはこうしたあり方を指している。
「無用」から「有害」へ
さて戦後、日本国憲法の制定過程で、日本の民主化を推し進めていたGHQ(連合国軍総指令部)民政局のチャールズ・ケーディスは、新たな議会制度として一院制を主張したが、政府側で交渉に当たった松本烝治・憲法改正担当国務大臣は二院制維持を主張した。松本の憲法改正案では、参議院の構成は「参議院法ノ定ムル所ニ依リ選挙又ハ勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス」ることとされているように、明らかに参議院に、衆議院に対する抑制役を期待していたものと思われる。