日本には「眠ったままの技術」が多すぎる 世界で勝つために変えなければいけないこと

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――日本は「技術の宝の山」だとよく話していますね。

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日本の技術力のレベルは相当高い。その技術をどうやってアントレプレナーシップやイノベーションにもっと活かせるか、というのが日本の今後の課題だ。

日本には眠っている技術が多すぎる。特に大学はそう。今話題になっているサービスを見ると、「浅い」ものが目立つ。たとえば、デートアプリだったり、人材アプリだったりで、コアな技術のものがなかなか出てこない。技術を持っている工学部の学生がアントレプレナーシップとイノベーションに燃えていないからだ。そこが大きなギャップになっている。

米国の大学の工学部にいっている学生はみんな会社を立ち上げる。ところが、東工大の学生が卒業して作るとは思えない。学生の技術を見ているととてもレベルが高いが、それがスタートアップにつながっていない。

日本企業の研究開発部門は時代遅れ

――なぜつながらないのでしょう?

起業やイノベーションという話題は外の世界では大きくなっているけれど、工学部の学生たちはあまり外を見ていない。テレビも見ず、何も読まず、研究室にこもっている(笑)。そういう学生に自分たちの持っている技術で会社を立ち上げられるという情報を届けてあげないといけない。

米国の場合、大学の部活やサークルでそういったものがある。だから、日本でも教育の一環としてそういったものがあると、工学部の学生でも起業がキャリアのオプションの一つだということがわかるのではないか。そのほかに、スタンフォード大学と交換留学をするとか、海外の企業でインターンシップできるようにするといったことも考えられる。教育レベルでの意識改革が必要だ。

――フェノックスは日本のベンチャーだけでなく、日本の大手企業からの投資を受け入れるなどしてパートナーを組んでいます。大手企業がシリコンバレーのVCに期待していることは何ですか。

ここ2~3年、日本の大手企業10数社とパートナーを組んでいるが、これらの企業のほとんどは独自で研究開発をやっている。だが、技術のトレンドは2年で変わってしまう。そうであれば、早くモノを作って早く展開するために、大手企業が従来の研究開発を続けることに意味はない。イノベーションを加速するために何が必要かといったら、やはりベンチャーと組むことだ。

米国の大手企業はその辺りがとてもうまい。オープンイノベーションという窓口があるだけでなく、VCから紹介されたベンチャーでいいところがあればどんどん買収している。私はIBM出身だが、IBMが2012年~2015年までのM&Aのために用意している資金は2兆円に上る。それくらいの金額を使ってM&AをやってIT分野でトップになろうとしている。ベンチャー企業との接点を持つことでイノベーションを加速させよう、という日本企業はまだ少ない。

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