日本には「眠ったままの技術」が多すぎる 世界で勝つために変えなければいけないこと

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――シリコンバレーのVCが日本に投資する例は極めて珍しいですよね。アジアだとインドや中国が多いと聞きますが。日本企業はなぜ人気がないのでしょう。

アニス・ウッザマン(Anis Uzzaman)/フェノックス・ベンチャー・キャピタル共同代表兼CEO。東京工業大学電気情報工学部卒。オクラホマ州立大学電気工学部で修士号、東京都立大学情報通信システム工学科で博士号を取得。IBM及びCadanceにてソフトウェア開発やマイクロエレクトロニクスなどの戦略投資を実施。著書に「スタートアップ・バイブル・シリコンバレー流・ベンチャー企業のつくりかた」

インドや中国の企業は自分たちの魅力をきちんと宣伝できている。自社の実力が1でも100ポテンシャルがあると説明する(笑)。シリコンバレーの投資家の多くはシンガポールにも行く。なぜかというと、マッチングプログラムなどのインセンティブがあるからだ。インドやシンガポールは言葉の壁がないというのも大きい。中国は人口が多いから、何とかなるだろうと思われている。

日本に住んだことのある人間からすると、インドや中国に比べて日本の方がリターンを得やすい環境だと思うが、それは私がここに住んで日本の文化や環境をある程度理解しているからに過ぎない。

――海外のVCを日本に呼ぶにはどうしたらいいのでしょうか。

その責任はやはり政府にある。政府はもっと「ジャパン」を宣伝していかないと。日本に投資してもちゃんと回収できるということや、言葉の壁を越えられるという安心感を提供しないといけないが、それができていない。

私は韓国にも行くのだが、韓国には米国のVCが多い。それは韓国政府の努力に依るところが大きい。韓国政府は最近でも、政府持ちでシリコンバレーの VCを数週間韓国に招待するということをやっている。そこまでやってくれるなら行ってみよう、という気になるし、実際に行って10社と話せば1社くらいは出資しようということにもなる。

韓国政府はこのほか、海外のVCにも投資している。ただし、それには条件があって、投資額の半分を韓国のスタートアップに投資しなければいけない。同じおカネでも米国のベンチャーキャピタル経由で投資するとプラスでアドバイスや提携相手を探してもらえる、ということをわかっている。そういうことを日本でもやるべきだ。

「スマートマネー」を狙え

――日本の資金環境は悪くないので、日本のベンチャーが海外のVCを頼る必要はないと思いますが、海外のVCだからこそのメリットは何でしょうか。

確かに日本でも企業は資金調達に苦労することはない。ただし、海外のVCが入ってくることは「プラスアルファ」のメリットがある。シリコンバレーでは良く「スマートマネー」という言い方をするが、これはおカネ+アドバイスの意味。海外のVCと組めば、グローバルで展開していくための考え方などをアドバイスしてもらえるだけでなく、グローバルプレイヤーとパートナーを組める利点もある。

――実際、フェノックスから出資を受けている日本のベンチャーが期待しているのも、そういったスマートマネーだと。

フェノックスから投資を受けている企業が狙っているのは、米国やほかの市場でのコネクション。フェノックスは東南アジアでも存在感があるので、そこのコネクションを狙っているパターンもある。たとえばテラモーターズは、東南アジアでマーケティングをするのにフェノックスを頼った。うちの投資先で「テック・イン・アジア」という東南アジアのスタートアップを中心としたニュースサイトがあるが、そこに徳重徹社長の記事を載せてもらった。テラが自ら頼んでも難しかっただろうが、フェノックスを通すことでうまくいった。

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