日本には「眠ったままの技術」が多すぎる 世界で勝つために変えなければいけないこと

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一方、フェノックスは世界で8000件近い案件を扱っているので、日本の大手企業は弊社と組むことによって世界中の色々な案件をみて、トレンドを把握し、自分たちのアイデアに当てはまるところと業務・資本提携をして、自分たちの開発部門に生かすことができる。

――日本の大手企業からどういった相談が多いのですか。

もっとも多いのが「イノベーションを起こしたいが、どこから始めたらいいのかわからない」という相談。他社が何をやっているかはとてもよく勉強しているが、自社では何から始めていいかわからない。そこで私はVCやベンチャーとのパートナーシップがスタートポイントになると説いている。

その次に多い相談が「パートナーを見つけたが、そこから得た情報を社内でどう活用したらいいのか」。皆さん「社内に『受け皿がない』」とよく言う。だが、それは反対の考え方で、情報が入ってきてから受け皿を作ればいい。受け皿を作ってから情報やアイデアを取りに行く、というのでは時代遅れだ。

ただし、新しいことをするときは社長やトップレベルが絡むことが必要だし、部長や課長などの意識改革も必須だ。そうすれば、パートナーから情報が入ってきたときにたとえば、経営企画部が受けてからそれぞれ関連の部署に投げて、つなげていく、といったことができるようになる。

フェノックスが日米の「懸け橋」になる

――フェノックスと提携したところで、実際に案件が動き始めている例はありますか。

たとえば、ある大手製薬会社がニューヨークにある医薬品関連販売会社のことを気に入り、フェノックスからその会社に連絡をとった。そうすると、何が起こるかというと、相手は送信者を「LinkedIn(リンクトイン)」で調べる。そこで、シリコンバレーのVCだとわかれば、必ずレスポンスがある。これが日本企業から直接連絡をとった場合だったら、まずレスはないだろう。

相手に会社のことを説明するにも、フェノックスの力が発揮できる。日本企業は自社のことを説明、宣伝するのがとても下手だからだ。私たちは20~30億円程度の売り上げ規模の会社でも、いかに業界で信頼度が高いかなどをきちんと伝えられる。

これが、日本企業から直接連絡を取った場合だと、「英語は話せるのか」「文化を知っているのか」というところから始まってなかなか本題に行きつけないが、フェノックスが間に入ることでどこにポイントを置いて話せばいいかわかるようになる。たとえば、日本企業の「検討する」を外国企業は「イエス」と受け止めるが、「これはフィフティフィフティだ」と伝えるなどフェノックスが懸け橋になることで、話がスムーズに進む。

製薬会社の例で言えば、その会社はその後試作品をもって日本にやってきて、すでに一般公開するまでになっている。

そのほかにも、出資企業の駐在員がフェノックスに籍を置くこともできる。つまり、米国のシリコンバレーを拠点にフェノックスの「アソシエイト」という肩書きの名刺を持って色々な会社を訪れることができる。これによって引っ張ってこられる情報量やその内容は半端じゃない。こうした情報を本社に送ることができるわけだ。

(撮影:尾形文繁)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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