女性活用を阻む「日本的転勤」という大問題 「地域限定正社員」では解決しない!

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限定正社員が、こうした「スキルを高められる機会」のような「やりがい」の意味でも均等な待遇を得られることできればライフステージにより限定を解くこともできるような柔軟な選択ができる制度になっていくと、家庭とのバランスはとりやすくなりそうです。

男性が選べること

前回記事との関連で言えば、女性だけではなく、男性がこうした制度を使えるようになっていくことが非常に重要だと思います。多くの企業で、限定正社員職を選んでいるのはほとんど女性です。

企業側は「男女問わず募集しているのですが、ほとんど女性しかこないんですよ」と言いますが、新卒採用のパンフレットにある一般職や地域限定職のページには女性の先輩しか出てこない、その職種について女子学生向けセミナーでしか説明しないという対応をしていては当然の流れだと思います。

男性にはある意味、限定正社員という選択肢はなく、正社員または非正規社員という極端な2つから選ばされているという面もあると思います。限定正社員の制度を設けている企業で起こりがちなのは、「限定正社員っていう制度があるのに、わざわざ総合職を選んでるんだったら、総合職を選んでいる限りはフルコミットしてね」と、主に男性の総合職がますます酷使されるケース。

夫がそういう企業で長時間労働、転勤も頻繁、妻は限定正社員でそれに合わせようとする……という形だと、結局夫婦の役割分担は固定化しますし、企業内でも女性の活躍は増えていかないでしょう。

また、就職時に選んだコースで一生固定されるのではなく、時期によって変えられることも重要です。総合職と一般職で言えば、「転換制度」を導入する企業は増えているものの、企業にとって都合のいい転換だけ認めているように見えるケースもありますし、実際に選ぶ人は少ないというケースも多いです。

多様な雇用形態が出てくると企業の人事管理上も複雑になってしまうという事情があるのかもしれません。でも、同一労働同一賃金を実現している組織で、雇用形態に限らずスキルアップをすることができ、それを評価できる仕組みがあれば、本来は能力や成果だけを見ればいいはずです。

ザ・年功序列の企業は減ってきているとは思いますが、勤続年数や雇用形態に関わらず、その人の仕事をどう評価をどうするのかということを明示化していくことが解決策のひとつとなりそうです。

次回は、こうした問題に先進企業がどのように対応しているのかという事例のご紹介とともに、もうひとつの転勤問題、「配偶者の転勤についていくのか?」という問題について取り上げたいと思います。

中野 円佳 東京大学男女共同参画室特任助教

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なかの まどか / Madoka Nakano

東京大学教育学部を卒業後、日本経済新聞社入社。企業財務・経営、厚生労働政策等を取材。立命館大学大学院先端総合学術研究科で修士号取得、2015年よりフリージャーナリスト、東京大学大学院教育学研究科博士課程(比較教育社会学)を経て、2022年より東京大学男女共同参画室特任研究員、2023年より特任助教。過去に厚生労働省「働き方の未来2035懇談会」、経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」「雇用関係によらない働き方に関する研究会」委員を務めた。著書に『「育休世代」のジレンマ』『なぜ共働きも専業もしんどいのか』『教育大国シンガポール』等。

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