金価格の高騰にめげない田中貴金属の節約力
細さ髪の毛数分の一を富士山の3倍の長さに
佐賀県神埼郡に田中電子の工場がある。この工場では顧客のコストを減らすために、ワイヤを極限にまで細く、長くする加工技術のノウハウを磨いてきた。ここで製造されるワイヤは、当初25マイクロメートル(1マイクロメートルは1メートルの100万分の1)の太さが主力だったが、今や15マイクロメートルの量産化も始まっている。
こうした極細化の加工は、専用機械を導入すれば誰にでもできるものではない。同社の笠原康志社長は、「一般的に線は細くすると切れやすくなる。細くても強い線を作るには添加物を加えたり、さまざまなノウハウが必要」と説明する。そのノウハウは当然、社外秘だ。同工場では直径が髪の毛の数分の一の極細ワイヤを、富士山の3倍の長さにまで切らないで作ることができるという。
ワイヤの場合、コスト面だけでなく、パソコンや携帯電話の小型化が進んでICの集積密度が上がったことも、細さへの要求につながっている。最近ではワイヤを二層、三層の形状でつなぐなど、IC周辺は複雑化している。そのため、「隣接したワイヤがくっつかないように、細い材料を真っすぐに作ることが技術のカギとなる」(笠原社長)という。