金価格の高騰にめげない田中貴金属の節約力
東京・銀座の一角に、黄金色の店内がひときわ目立つ店舗がある。田中貴金属ジュエリー直営店の「GINZA TANAKA」。明治25年開業の老舗宝飾店にとって、今年は例年にないほど多くの客でにぎわった年になった。
10年前の約5倍にまで金価格が高騰し、夏場は保有する金を売却に来る人が殺到。加えて、株や債券に代わる安全資産としての金の人気も根強く、「高値だが買いに来た人も多かった」(田中貴金属ジュエリーの水木直人執行役員)。店頭のにぎわいはメディアでも頻繁に報じられ、貴金属商の「TANAKA」ブランドは、国内に幅広く浸透している。
しかし金、銀、プラチナなど貴金属価格の高騰は、田中貴金属ジュエリーの経営にとって、決して喜ばしい状況とはいえない。原価上昇となる反面、そのまま宝飾品価格に上積みできるわけではないからだ。「価格が上がったから、儲かっているだろうといわれるが、必ずしもそうではない」(水木氏)。
さらに、田中貴金属グループ全体を見渡しても、貴金属価格高は逆風でしかない。全事業領域のうち、売り上げの約7割を占めるのは、電子部品の材料などの工業製品だからだ。田中貴金属グループは貴金属商というより、むしろ素材加工業者としての側面が強いのである。