ロードスター、買って乗って実感したこと

これは「一般道で運転を愉しめる」クルマだ

もし筆者がサーキットでスポーツ走行をするのであれば、新型ロードスターの足回りは少し柔らかすぎると感じるかもしれない。しかし、よく吟味されたセッティングは、極端な挙動をさせてみてもサスペンションの底をガツンと突くことはなく、決して破綻しない中で良好な乗り心地も実現している(筆者所有の車で比較すればGOLF V R32よりも新型ロードスターの方が乗り心地はいい)。そして、何より姿勢変化が判りやすいからこそ、FRレイアウトの車を操る愉しさも身近に感じられる。

限界走行に近い状況ではオーバーアクションに感じていた新型ロードスターの動きも、ごく普通に制限速度の範囲内で街中、峠道、高速道路のジャンクションなどを走り抜ける場面では、むしろ適度に車体の姿勢を感じることができ、好ましく感じられるようになってきた。固い足回りで”フラットライド”を志向するクルマとはまったく違うやり方だが、こちらの方がドライビング感覚を楽しむことができる。

さらに決定的な”感覚”の良さは、やはり車体そのものの軽さがもたらしているのだと思う。最軽量モデルは990キロしかない新型ロードスターは、回頭性が良いといった一義的な意味での軽さではなく、身のこなし全体が軽い。この軽さの感覚が、単なる移動をエンターテインメントの場に仕立て上げてくれる。

普段着で愉しむドライビングカーという視点で言えば、新型ロードスターのセッティングは、まさにちょうどいい塩梅だ。もし、限界付近での姿勢変化をもっと抑えたいのであれば、オーナー自身が脚周りを換えればいいだろう。

少なくとも、日常乗り回す軽量コンパクトな車として使いながらも、移動中のドライビングをもっと楽しみたい、という筆者の目的を達成するには、最善の選択だったと思う。

エンジンは「パワフル」とはいえない

小さいにもかかわらず寸詰まり感がない(筆者撮影)

新型ロードスターを入手してからというもの、不思議とスタイリングやデザインについて質問を受けることはない。一方、何人かの知人がエンジンが非力すぎるのではないか、という質問をしてきた。

スタイリングに関しては、その小ささ(歴代でもっとも前後長が短い)と、小さいにもかかわらず寸詰まり感がない(人間が入る空間を小さくするには限界があるため、短い車はずんぐりしがちだ)のは見事だと思うが、このあたりは好みだろうか。実物をご覧になっていただきたい。

一方のエンジンだが、パワフルかと問われれば、否定せざるを得ない。しかし、エンジン出力に不満があるかとの問いなら、充分満足と応えておきたい。そもそも、この車で何か別の車種と1秒を争うタイムトライアルをするわけではないだろう。一般道でのドライビングを楽しみ、高速道路での迅速な移動が目的というなら、専用チューニングが施された1.5Lエンジンで充分だ。

新型ロードスターに搭載されエンジンには、毎分3500回転未満の領域における「意外にイケるね」という粘り強いトルク感と、毎秒4000回転以上からレブリミットの毎分7500回転まで吹け上がる“軽い”回転上昇感の両方が混在している(実際のトルク特性とは異なるかもしれないが)。

高回転域まで軽くスムーズに回る感覚があるため、MTならば少し低めのギアに入れて回転を合わせれば、難なく必要な加速を得られる。普段から併用している約2倍の出力を持つ車と比べても、「残念」という気持ちはない。

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