ロードスター、買って乗って実感したこと これは「一般道で運転を愉しめる」クルマだ

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実はマツダが独自にプログラムしたという、アイシン製の6速AT車にも試乗したのだが、こちらも車好きのことを考えた作りで、得たい加速をインスタントに得られるという意味で、モノグサに操作するMTよりも遙かによいフィールを得られるものだった。

もちろん、絶対的な速さという意味で、北米や欧州向けには出荷されている2L版エンジンを欲しいという声もあるだろう。しかし、“一般道でのドライビングを愉しむ”という観点で見たときに不満かといえば、まったくそんなことはない。

その回転フィールの軽さや吹け上がる際の、控え目ながら気持ちよいサウンドは、感覚的な気持ちよさを上手に演出していると思う。

標準状態でもバランスがいい

冒頭でも述べたように、スポーツカーに求める要素は人それぞれだ。と同時に、ロードスターという車に求めるイメージも異なるだろう。上記は筆者がこの2カ月半あまりで感じたことの一部でしかない。

自動車という複雑な機械ゆえに、使い込んで突き詰めて行けば、どこかに自分の感覚とは異なる部分は見つかるものだ。しばらくの間、新型ロードスターを乗ってきて、その特徴をつかみ始めてきた今、もう少し、足元を固めてもいいかな?という気になってきているが、一方で標準状態のバランスのよさには“この状態を壊したくない”と思わせる絶妙の味付けだ。

個人的にはしばらく、この車と向き合いながら、いろいろと愉しんでいきたいと思っている。これまでハイパワーのスポーティーな欧州車にばかり目が向いていたのが嘘のように、車に対する考え方が変化した。

同時にマツダという会社の価値が何であるのかも感じた。グローバルの自動車市場において、小規模ながらも生き抜くためには、独自性が重要ということだ。

マツダは第2世代のSKYACTIVへと進む(撮影:梅谷秀司)

かつて、筆者はマツダのアテンザが登場する際、その試乗企画に参加して房総をドライブしたことがある。日本車らしからぬ力強いスタイリングと、ディーゼルとは思えない回転フィールを持つエンジンに驚いたものだ。

自動車業界はグローバルでの再編が進み、巨大な恐竜が大きな足跡を残しながら市場を席巻している。しかし、だからこそ、その大きな足跡には、埋められない隙間も生まれるのではないだろうか。

工業製品を量産する中で、“感覚”すなわちフィーリングが安定する領域まで、追い込んで生産するのは難しいことだ。少量生産の高級ブランドならば可能でも、誰もが手を出せる価格帯の量産品でフィールを追求することは、効率を求める大メーカーには難しい。新型ロードスターが追求しているのは量産車におけるフィーリングの追求であり、それこそがマツダの生き残り戦略なのだと感じた。

マツダは車体、エンジンなど自動車を構成するコンポーネントすべてを新しい技術レベルで落とし込んだSKYACTIV技術を推進してきたが、この新型ロードスターで第1世代のSKYACTIVは完成。第2世代のSKYACTIVへと進むという。

もし新型ロードスターの感覚性能を、あらゆる第2世代SKYACTIV車に盛り込めるとすれば、マツダブランドの大きな武器になるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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